口腔病学会雑誌
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下顎を偏位させた際のラット下顎頭軟骨の反応
今村 正史
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1973 年 40 巻 4 号 p. 457-475

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抄録

幼若ラット, 成熟ラットの下顎切歯唇面に斜面板を装着し, その結果誘起させる下顎遠心咬合に対して, 下顎頭軟骨がどのように反応するかについて定量的に検討した。すなわち, 3H-thymidine, 3H-prolineを用いたオートラジオグラフィー, ならびにHE染色標本により, 軟骨細胞数, 軟骨層厚径, 軟骨細胞増殖, 軟骨基質形成, 軟骨基質吸収の各々について検討を加え, 次のような結果が得られた。
1.幼若, 成熟個体ともに, 斜面板による外的刺激を与えた場合には, 下顎頭軟骨における細胞数は, わずかな減少を示したが全般に大きな変動は認められなかった。
2.外的刺激を受けた場合の下顎頭軟骨の各層の厚径は, 幼若個体では著しい減少がみられ, とくにhypertrophic zoneで顕著であった。しかし, transitional zoneの厚径には余り変動がなかった。一方, 成熟個体の厚径はhypertrophic zoneに減少がわずかに観察されたにすぎず, ほとんど変動しなかった。
3.下顎頭軟骨の標識指数は, 幼若個体では下顎頭軟骨の中央部および後方部で著しい低下を認めたのに対し, 成熟個体では中央部に低下を認めたが, 幼若個体にみられたような大幅な低下はなかった。
4.外的刺激は, 軟骨細胞分裂のみならず, 軟骨基質形成にも多大の影響を与えた。すなわち, 軟骨に取込まれた3H-prolineによる銀粒子数は, 幼若個体では全領域で著しく減少し, 基質内線維形成の低下を示した。成熟個体では後方部で減少が観察されたのみで, 幼若個体のような大きな変動はなかった。
5.Erosion zoneにおいて軟骨の吸収に関与していると思われるchondroclastの出現数は, 幼若個体, 成熟個体ともに減少した。
6.成熟個体は幼若個体に比し, 細胞増殖, 基質形成, 基質吸収のすべての面で活性が著しく低下しており, 外的刺激に対する反応は幼若個体と同様に低下を示したが, その変動量は僅少であった。

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