口腔病学会雑誌
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クラスプ用金属材料の機械的性質に関する研究
第2報鋳造クラスプの維持と弾性的性質について
松田 浩一
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1975 年 42 巻 1 号 p. 22-41

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抄録

鋳造クラスプの維持力と弾性的性質を知るために, 市販のクラスプ用合金を用いて鋳造鉤を作製し, 天然歯を用いて繰り返し引抜試験を行い, 各種合金の添窩量と維持力の関係, 繰り返しによる引抜荷重の変化を求め, 前報で報告した各材料の弾性的性質および応カーひずみ曲線と比較検討を行った。この結果, およそ次のような知見が得られた。
(1) 臨床的には, 鉤歯 (大臼歯) の生理的な範囲内で, レスト付2腕鉤に必要な維持力が得られる添窩量は, コバルトクロム合金を使用した場合0.25mm, 14K, 金銀パラジウム, 白金加金を使用した場合は0.5mmである。
(2) クラスプの維持力は材料のヤング率と密接な関係があり, 同じ形状の場合維持力はヤング率にほぼ比例する。ヤング率の大きさに比例して維持力はコバルトクロム, 14K, 金銀パラジウム, 白金加金の順であるが, コバルトクロムの維持力はヤング率と同様白金加金の約2倍である。
(3) 弾性エネルギー率は, その値が大きいほど永久変形を起しにくいが, 白金加金が最も高く, ついで14K, コバルトクロム, 金銀パラジウムの順であるが, 繰り返しによる引抜荷重の変化は, 白金加金が最も安定し, 回数による引抜荷重の変化は少ない。
(4) 繰り返し引抜試験を行った場合, 引抜荷重の変化は各材料によって異なり, 各材料の応カーひずみ曲線で示される特性とよく対応している。コバルトクロムでは応力―ひずみ曲線は立ち上りは急であるが比例限を越えると急に勾配が減少するが, クラスプとして使用した場合, 残留ひずみを蓄積することによりしだいに引抜荷重が低下する。14Kでは加工硬化により一旦荷重が増加した後次第に低下する。白金加金の場合, 応カーひずみ曲線は最初の立ち上りは小さいがほぼ直線的に増加し, 比例限度が大きく, 比例限度を越えても曲線の勾配は急には低下しない。このことは弾性エネルギー率が大きいことと共に引抜荷重が安定している原因である。

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