口腔病学会雑誌
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積層水膠材印象間接法の精度に関する研究
大庭 譲治
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1979 年 46 巻 4 号 p. 256-268

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抄録

アルジネートとハイドロコロイドの連合による積層水膠印象法が, 鋳造修復物調整のための間接印象法としていかなる精度を有するものであるかを明らかにするために, 内外側対照測定器, 併立原型・樋形トレー印象法, 両隣在歯アンダーカット併立原型・樋形トレー印象法, 後方歯傾斜併立原型・樋形トレー印象法, 細線再現性試験法によって測定し, 在来のアルジネート, ハイドロコロイド, ラバーベースおよび積層シリコーンの4種の印象法と比較し, 次のような知見を得た。
1, 積層水膠材印象法によって得られた石膏歯型は, 他の4法によるものと同様に, 原窩洞に比較して, 外側がやや大きく, 内側がやや小さくなっており, 本法による歯型の寸法変化は臨床上ちょうど良い程度と考えられる。
2.積層水膠材印象法により, 併立原型を樋型トレーで印象して得られた石膏歯型では, 他の4法によるものと同様に, トレーに支えられた頬舌方向と開放された近遠心方向の印象材の収縮の差によって生ずる変形度はきわめてわずかで, 臨床使用に支障のないものであることが明らかとなった。
3.積層水膠材印象法は, 積層シリコーン印象法と同様に, 両隣在歯にアンダーカットがあっても, 中央部の石膏歯型に及ぼす影響は少なく, その変形は臨床上さしつかえない程度であった。
4.積層水膠材印象法では, 隣在歯の傾斜による石膏歯型の変形は, 積層シリコーン印象法と同様にきわめてわずかで臨床上まったく支障のないものであった。
5.積層水膠材印象で得られた石膏模型では, 積層シリコーン印象法と同様に, 隣在歯の傾斜が大きくなるほど歯型と傾斜隣在歯との歯間距離が短くなる傾向を示した。その程度は臨床上支障はないと考えられるが, 本材料がシリコーンなどに比較して物理的性質が若干弱いことを考えると, 傾斜の強い症例ではあらかじめその部分を粘着性のワックスなどで埋めておけばいっそう安全だと考えられる。
6.積層水膠材印象法によって得られた石膏模型の精度は, 積層シリコーン印象法, ハイドロコロイド印象法と同様に10μの細線まで再現し, 間接印象法として臨床上十分の精度を持つものと考えられる。

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