フォーラム現代社会学
Online ISSN : 2423-9518
Print ISSN : 1347-4057
論文
自主防犯活動と街区のポリティクス : 京都市繁華街の事例をもとに
山本 奈生
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2011 年 10 巻 p. 109-121

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抄録
近年、自主防犯活動が急増しているが、これは「体感治安」の低下といった心理的要因に還元できるような出来事なのだろうか。もちろん、「凶悪犯罪」報道の増加などは、自主防犯活動を取り巻く一つの状況として指摘されるべきであるが、本稿では、まずそのような活動が具体的に何を志向しているのかを明らかにしようと試みた。日本における自主防犯活動の調査事例はいまだ手薄であり、本稿では京都市繁華街におけるフィールドワークの結果をもとに、次の点を中心に議論を進めていく。自主防犯活動は犯罪それ自体の摘発よりも、「犯罪的なもの」を警戒することによる抑止的効果を期待する振る舞いであるといえるが、では、誰がどのように「無秩序」なものを定めているのだろうか。また、多くの人々が自主防犯活動に参加しているが、彼/彼女の問題関心は「体感治安」の低下といった心理的要因に還元しうるものではなく、その他の要素が関連しているのではないだろうか。以上の点を中心に、都市部における自主防犯活動を、空間を創出しようとする多元的な力の交錯する場として捉えることで今日の状況を分析する。
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© 2011 関西社会学会
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