フォーラム現代社会学
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論文
  • ―中国のロリータファッション文化をめぐる生活史から―
    馮 可欣
    2024 年 23 巻 p. 3-16
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/08/20
    ジャーナル フリー

    本稿では、中国におけるロリータ文化の少女性のもつ意味を、中国の少女時代のあり方とそれをとりまくジェンダー秩序を考慮に入れて明らかにする。日本と中国の従来の研究では、少女性はロリータ文化の本源的な特徴とされている。日本において、妻・母などの役割を免れるモラトリアム期間というイメージと結びついているロリータ文化の少女性は、成長の拒否と少女時代の永続を意味するとされる。一方中国における少女時代は個性を抑圧し、少女たちを男性に合わせて管理する期間であり、ロリータ文化が持つ少女性は日本とは異なる意味を持つと考えられる。そこで本研究はロリータ文化を愛好する中国の成人女性16人に生活史インタビューを行い、以下の知見を得た。まず、中国の中等教育段階では、男性規準の能力観が支配的であり、女性的な身体は抑圧される。一方、学校にも浸透している消費文化は、少女に美しさを同時に期待する。こうした女性性に関するダブルバインドにより、彼女たちは少女時代の欠如を感じている。そして、成人女性への移行の中で、女性的な身体は社会的に要請されると同時に、女性によっても自発的に追求される。それは少女時代の欠如の埋め合わせとして捉えられている。そこで、中国のロリータ文化の少女性は、男性規準の能力観からの脱出と女性性の回復と意味づけられながら、成人女性をとりまく美しさの規範との主体的な交渉のツールでもあると結論づけられる。

  • 桑原 啓
    2024 年 23 巻 p. 17-30
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/08/20
    ジャーナル フリー

    近年、ひきこもり経験者への支援が社会課題となり、地元レベルでの課題解決が着目されている。しかし、そもそも、あらゆるひきこもり経験者が、地元や家族のいる地域で生活することを望んでいるとは限らない。こうした関心から、移住を経験したひきこもり経験者の意味世界に本稿は照準し、移住の動機とその前後の状況がどのようなものだったかを問いとして掲げる。

    2020年9月より筆者は、ひきこもり経験者や生活困窮者への支援を行っている非営利法人の利用者を対象に、半構造化インタビューとシェアハウスでの参与観察を行ってきた。利用するデータは2020年9月から2023年12月までのインタビュー記録とフィールドノーツの一部である。

    先行研究と異なる結果としては、次の3点が指摘された。①ひきこもり経験に関連するリアルタイムの相互行為の対象となった他者の有無が、ローカルな生きづらさと関係していること。②移住前後の地域をめぐる①の差異により、移住先での匿名性の低さは大きな問題とはみなされず、その点で移住生活に支障はないこと。③ひきこもり経験者による移住の場合、地元・親元ネットワークの回避は、動機としてではなく機能として見出されること。

    これらの結果から、ひきこもり経験者の一部を、潜在的に移住のニーズのある主体として捉え直す必要があることを、本稿は示唆した。

特集 社会学と在日朝鮮人研究
  • 髙谷 幸, 蘭 信三
    2024 年 23 巻 p. 31-32
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/08/20
    ジャーナル フリー
  • 李 洪章
    2024 年 23 巻 p. 33-46
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/08/20
    ジャーナル フリー

    1980年代までの在日朝鮮人のエスニシティに関する議論が、当事者の実感に基づいたイデオロギッシュな論評が中心であったのに対し、初期の社会学における在日朝鮮人研究は、同化と異化のあいだのグラデーション(外的複数性)や、地域における民族間の複雑な共同関係を描き出した。その後、同化/異化を両極とする設定そのものの見直し、方法論的ナショナリズムを乗り越えるためのトランスナショナリティへの着目、「外」の世界の複雑性を研究内の視点に取り戻そうとする動き、現実的な経験としての「民族」の再記述などが試みられるようになった。

    また、国境を越えた移動や意識のあり方についても、近年数多くの研究成果が生み出されている。しかしその多くが、「トランスナショナル」という単一の要素のみに着目することで、もしくは「グローバルとローカルの接続」を過度に強調することで、「在日朝鮮人にとっての祖国/民族の現在をいかに捉えるのか」という問いを後景化させてしまっている。

    それに対して本稿では、方法論的ナショナリズムに先祖帰りすることなく上記の問いと向き合うためのひとつの方法として、旅行や研修、親族訪問なども含む在日朝鮮人の「本国」への移動を「帰還的移動」として捉え直すことを提案したい。

  • ―交差的抑圧、植民地的家父長制、コミュニティ・アクティビズム―
    徐 阿貴
    2024 年 23 巻 p. 47-55
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/08/20
    ジャーナル フリー

    在日朝鮮人女性に関する社会学的研究は、民族とジェンダー、階級等の交差による特有の抑圧構造や、そのような状況下で表れるエージェンシーを検討し、男性中心的な民族運動や研究、あるいは日本人女性中心の主流フェミニズムに対し問題提起を行ってきた。在日朝鮮人女性とは、人種エスニシティ、ジェンダー、階級、国籍、セクシュアリティなどが相互に作用するメカニズムを明らかにするための分析カテゴリーであり、女性たちが受けてきた複合差別を提起する運動カテゴリーでもある。本稿では、インターセクショナリティを分析視角とする在日朝鮮人女性研究が提起してきた論点として、交差的抑圧構造、植民地的家父長制、ケアを軸とするコミュニティ・アクティビズムを取り上げる。

  • ―川崎の在日コリアン・ラッパーから考える―
    川端 浩平
    2024 年 23 巻 p. 56-67
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/08/20
    ジャーナル フリー

    本稿では、これまで筆者が行ってきた現代日本社会におけるナショナリズムと排除・差別をめぐる20年以上におよぶ研究調査をふりかえるなかで自身が向き合ってきたテーマを改めて整理することから出発して、在日コリアンによるアイデンティティの政治がいかに次世代に継承されてきているのかについての考察を深めることを試みている。現在フィールド調査を行なっている川崎では、在日の民族組織ではなく、キリスト教会と地域コミュニティを中心とした在日のアイデンティティ政治が1970年代に展開してきた。これらは、今日の行政と市民が協働する、いわゆる多文化共生の礎となる草の根的な実践であった。もう一方で、行政との取り組みをめぐり、運動の当事者や地域コミュニティには様々な対立や課題を抱えることにもなった。また、2000年代半ばからはインターネットやデモを通じた排外主義の標的にもなっている。このような社会的文脈において、かつてのアイデンティティの政治が対立や葛藤を抱えつつも次世代へと展開している状況を考察していく。具体的には、在日のアイデンティティ政治の起点となった在日大韓基督教川崎教会の担当牧師である李仁夏を取り巻く歴史・社会的文脈を概観し、その教会に通っていた在日のラッパーFUNIの文化的実践を中心に見ていくことで、ポスト・アイデンティティの政治への移行とその課題を考えていく。

  • 反レイシズムをめぐって
    板垣 竜太
    2024 年 23 巻 p. 68-74
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/08/20
    ジャーナル フリー
  • 在日朝鮮人の複数性と在日研究のアイデンティティ理解
    孫 片田 晶
    2024 年 23 巻 p. 75-82
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/08/20
    ジャーナル フリー
小特集 京都を複眼的に解き明かす
  • 佐藤 嘉倫
    2024 年 23 巻 p. 83-84
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/08/20
    ジャーナル フリー
  • ―文化伝播にみる権威と願望―
    川田 耕
    2024 年 23 巻 p. 85-95
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/08/20
    ジャーナル フリー

    江戸時代の終わりころまでには、日本列島の各地で様々な形態の七夕祭が広く行われるようになったが、その諸要素の多くは、元来は京都の朝廷や町で行われていたものであり、それらが周圏論的に各地に伝播していったものと思われる。ブルデューら社会学者は、上流階級の文化は、その内在的な価値とは無関係に、階級的な上下関係ゆえに他の階級の人々によって模倣されると考えた。しかし、七夕文化のなかでも江戸時代における「練り歩き型」という子どもたちを主体とする七夕祭の京都での形成とその伝播を跡づけてみると、それは単純な権威の模倣にとどまるものではなく、創造的な選択というべきものが行われており、子どもたちの生育を願う大人たちの「やさしさ」の深化を含んだ、エリアスのいう「文明化」に相当する文化的・精神的な大きな流れのなかの現象であったことが推測される。

  • 鍛治 宏介
    2024 年 23 巻 p. 96-106
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/08/20
    ジャーナル フリー

    本稿は、江戸時代幕末期から明治初頭にかけて、京都祇園において活動していた新興の遊女屋尾上屋の名簿「遊女芸者名前控」を分析して、幕末期に活動した芸者89人と遊女13人、計102人の娘たちの契約の実態を明らかにするものである。この名簿は現在、西尾市立岩瀬文庫が所蔵している先行研究では未活用の史料である。筆者は以前、芸者や遊女として働くために、祇園のお茶屋と一生不通養子娘契約を結んで、養子という形で平均年齢9歳で、祇園にやってきた娘たちの実態や、彼女たちのライフコースを明らかにした。本稿では、娘たちが祇園にきてから、抱店での数年の修行期間を経て、新たに遊女屋と結んだ芸者奉公契約、遊女奉公契約の実態を明らかにするものである。「遊女芸者名前控」には、遊女奉公人請状や芸者奉公人請状に記載されている奉公の年限と給金額、遊女奉公と芸者奉公の区別、店で名乗る店名前と本名、実親や保証人、さらには、契約を仲立ちした口入などの情報が記されている。また契約成立後、本人の状態になんらかの異動があったときにも追記され、抱え芸者と遊女の管理に使われたと類推される名簿である。名簿の分析により、芸者および遊女奉公契約の平均年数や給金の平均額、親元や口入の住所、氏名などが詳細に判明した。また幕末期の動乱のなかで京都市中の借家人層が激減したことで、その層からの供給が減り、京都外からの輸入が多くみられることも指摘した。

  • 岡本 裕介
    2024 年 23 巻 p. 107-115
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/08/20
    ジャーナル フリー

    この報告では、「関係人口」という語の使われ方を、社会状況と関連づけながら整理した。また、国土交通省の「ライフスタイルの多様化と関係人口に関する懇談会」のもとで行なわれた「地域とのかかわりについてのアンケート」のデータを使って、特に京都を訪れる関係人口がもつ特徴の一部を見た。「関係人口」は、もともとは過疎化の進んだ地域の定住人口を増やすことを狙っていたと思われる。当該地域と最も深い関わりをもつ定住者(定住人口)と、浅い関わりしか持たない旅行者(交流人口)との中間には、質、量ともに様々な関わり方があり、このような関わりをもつ人々が「関係人口」と呼ばれるようになった。関係人口の考え方は、人々が自発的に自由に移動し、しかも複数の地域と関係したり関心をもったりすることを前提に、そのような人を一定量集める仕組みとして利用されている。ただし同時に、少なくともそのうちの一部は、主体的に、場合によってはクリエイティブに活動することを期待されている。関係人口は、量としては、どちらかと言えばより期待されている農村地への訪問よりも都市や郊外への訪問が多い。京都府は訪問型の関係人口(居住人口比)が多いことがわかっていたが、やはり多くは都市圏への訪問である。全体としては、観光地としてのブランドが影響していると思われる。他方、都市圏外に関しても、住民やオンラインコミュニティの影響が顕著であるという特徴がある。

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