フォーラム現代社会学
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論文
  • ―報道見出しの急増期に着目して―
    景山 千愛, 横田 恵子, 花井 十伍, 大北 全俊
    2022 年 21 巻 p. 3-15
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/06/08
    ジャーナル フリー

    日本におけるHIV・AIDSをめぐる報道は、1980年代にはじまり、その後、1987年の「エイズパニック」、1996年の薬害エイズ裁判和解判決などで盛り上がりを見せたと考えられてきた。しかし、HIV・AIDSに関連する新聞記事数を確認すると、上記の出来事のほかに、1992年にも報道数の大きな増加があることが確認できる。しかし、1992年においては、HIV・AIDSに関する目立った出来事は生じていない。

    本稿では、この1992年とその前後の報道の見出しを対象に、KH Coderを用いた分析を行い、この時期に主にどのようなトピックが報じられていたのか、明らかにすることを試みる。まず、1990年代前半のデータについて各年を外部変数とし、対応分析と共起ネットワーク分析によって各年に特徴的なトピックを明らかにした。次に、1992年のみのデータを対象に共起ネットワーク分析を行い、つながりの強い語をトピックとしてまとめることを試みた。最後に、分析結果を1992年当時について記述した文献と照合し、KH Coderでの分析結果との相違について確認を行った。

  • ―認定看護師に対する質的調査からの一考察―
    中田 明子
    2022 年 21 巻 p. 16-29
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/06/08
    ジャーナル フリー

    半専門職は職能団体が中心となって、業務条件の改善のために専門職化を目指してきた。本稿では、代表的な半専門職の看護師を検討の対象に取り上げ、現場での調査を基に、職能団体の戦略が適切であるか検討した。四半世紀の間に専門看護師・認定看護師・特定行為研修制度が設立された。日本看護協会は3つの教育制度において、コストに関しては受講者が負担すべきと考え、教育内容に関しては、専門看護師・認定看護師制度には専門分化、特定行為研修制度には自律性という特徴を持たせた。また高度な知識を持った看護師の誕生に伴い、現場で担ってきた多様な業務に関しては、看護助手を雇うという業務の階層化を求めてきた。訪問看護ステーションに所属する認定看護師28人に行った質的調査の結果は、以下になる。調査対象者は第1に、自律性を高める特定行為研修の受講に消極的で、業務の階層化も志向せず、資格の保持にも固執していない。第2に、資格取得による経済的なメリットは少ないため、自己の知識の向上を目的としていたが、指導者となる教育を受け、現場で指導的役割を果たすようになっている。職能団体の意図とは異なり、現場の認定看護師は専門職化を志向していないため、半専門職は専門職化という迂回をせずに、業務条件の改善を求める必要がある。しかし日本の看護師の歴史では質より量の育成が優先されてきたため、組織全体の質を向上させる制度ができたことの意義は大きい。

  • ―1980年代~2000年代までの偕行社の動向を事例に―
    角田 燎
    2022 年 21 巻 p. 30-44
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/06/08
    ジャーナル フリー

    本稿は、戦後派世代の旧軍関係者団体への参加と、そこで生じた「歴史修正主義」の台頭を、陸軍士官の親睦組織である偕行社を事例に明らかにする。先行研究では、旧軍関係者団体の戦後派世代への「継承」の困難さが指摘されている。しかし、偕行社のように現在まで存続している団体もある。本稿では、偕行社がどのようにして困難さを乗り越え存続したのかを会内の「歴史修正主義」の台頭や、自衛官OBの参加に注目して分析する。

    親睦組織として発展した偕行社では、「陸軍の反省」が求められていた。しかし、1990年代後半になると「自虐史観」への反発が強まり、会内で「歴史修正主義」が台頭した。同時期には、会の資産と将来について、激しい議論が展開された。そうした対立を孕みつつも、最終的に自衛官OBを後継者として迎え入れ、「英霊」の永続的奉賛のため、会は存続することとなる。

    この背景として、会の「政治化」と「歴史修正主義」があった。会の「政治化」は、「歴史修正主義」の影響を受け「自虐史観」の打破を目指す戦争体験世代にも、陸自の支援や防衛に関する政策提言を目指す自衛官OBにも許容可能なものであった。それぞれの「政治化」の方向性は異なったが、政治団体化という大きな目標自体は同じだった。政治的中立を謳った偕行社という旧軍関係者の親睦団体は、戦後世代を受け入れ、政治団体と形を変えることで、現在まで存続することになったのである。

特集 社会学を高校生にも―〈市民〉を育てる実践
  • 都村 聞人
    2022 年 21 巻 p. 45-47
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/06/08
    ジャーナル フリー
  • ―社会学は将来世代にどうアピールできるのか―
    丹辺 宣彦
    2022 年 21 巻 p. 48-54
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/06/08
    ジャーナル フリー

    日本社会学会では2020年4月より、学会ホームページ上で「社会学への誘い:高校生・進路を考えている皆さんへ」というウェブページの運用を開始した。18歳人口が減少するなか、高校での知名度が低い社会学を広くアピールすることは喫緊の課題になっている。本報告では、このウェブページを作成したねらいと内容の構成について簡単に紹介したい。また後半では、高大連携をより深く進める上でどのような方策が考えられるのかを、SSH(スーパーサイエンスハイスクール)に指定されたある公立高校の文系向けプロジェクトの実践をてがかりに考えてみたい。将来を担う世代に社会学をアピールし、学んでもらうために、関連学会が今後さまざまなアプローチを検討し、導入していくことが期待される。

  • 片田 孫 朝日
    2022 年 21 巻 p. 55-63
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/06/08
    ジャーナル フリー

    筆者は大学院で社会学を学び、博士の学位を取得した後に、中高一貫校の公民科の教員になった。中学・高校での授業を通じて、社会学は公民教育にとって非常に役に立つと感じできた。勤務する学校は私立の進学校であり、特殊な学校である。そのことは承知の上で、この報告では自分の授業をふりかえり授業内容を具体的に示しながら、公民教育にとっての社会学の積極的意義について述べたい。社会学的な思考法という考え方の面と、貧困など社会問題についての社会学の知見という内容面から、それを述べる。

    次に、筆者は授業の進め方の一つとして、ワーク・ライフ・バランスのように生徒にとって身近で重要な公共的課題を積極的にとりあげ、それを生徒が将来の自分の生活や生き方とつなげて考えられるようにとり組んできた。また、筆者自身の市民としての公共的課題へのとり組みや、父親としての育児についても、そこでの経験や問題を紹介したり、分析してみたりしている。教員が、自分の生活や生き方を社会学的に語ることは、生徒たちに社会学の魅力を伝えることにもなっていると思われる。

  • ―「公共」や「現代(市民)社会」を生徒に―
    杉浦 真理
    2022 年 21 巻 p. 64-72
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/06/08
    ジャーナル フリー

    市民性教育と社会学との出会いを確認してゆきたい。本来現場高校教員は、社会学を意識しないで授業をしている。それは、教育社会学以外、教職課程で履修することはなく、授業内容に関わって、一般教養的な社会学は公民科の免許では選択科目に過ぎない。憲法学、経済学の原理やしくみは、ふんだんに科目「現代社会」(旧教育課程)、「公共」にあるにも関わらずにである。そこで、社会学と高校生の接点を、市民性教育の文脈ともかかわり検討し、社会学の高校公民科「現代社会」(旧課程)「公共」(2022年度から新課程)での可能性について考えたい。

  • ―私が新書を書き続ける理由(わけ)―
    好井 裕明
    2022 年 21 巻 p. 73-80
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/06/08
    ジャーナル フリー

    社会学部や社会学科、社会学専攻に入学する新入生や高校生に対して、社会学をどのようにしたら魅力的に伝え得ることができるだろうか。彼らの多くは、学校生活、部活、家庭生活など“半径数メートル”の世界で生きてきている。私は、抽象的でどこにあるのか実感できない社会ではなく、彼らが実感できる社会として日常生活世界のありようを語り、そこで他者理解や他者理解の困難さを考える学が社会学だと伝えている。さらに私は、他者を考える重要なフィールドが日常生活世界であり、日常を考えるうえで重要な契機として「自明性」「日常性」「現在性」「他者性」を考え、それぞれをテーマとして社会学の新書を執筆してきた。なぜ教科書ではなく新書なのだろうか。いくつか理由はあるが、もっとも重要な理由は、「教科書」的構成や「教科書」的文体から解放され、自由に社会学の魅力を語ることができるからだ。インターネットを通しての社会学的知の発信。思わず手に取って読んでしまうような魅力あふれる社会学冊子の刊行。高校での授業に役立つ社会学テキストや副読本の開発。悩める社会学者を主人公としたコミック、等々。社会学を高校生に広める工夫は考えられるだろう。ただ前提として社会学者が本気で考えるべき問いがある。

    “半径数メートル”の世界から彼ら自身が旅立つのに必要な知やセンスをどのようにわかりやすく、魅力あふれる言葉で伝えることができるのだろうか。この問いだ。

  • 都村 聞人
    2022 年 21 巻 p. 81-87
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/06/08
    ジャーナル フリー
学術誌のエートスとシステム―ソシオロジ200号刊行を記念して―
  • 岡崎 宏樹
    2022 年 21 巻 p. 88-91
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/06/08
    ジャーナル フリー
  • 吉田 純
    2022 年 21 巻 p. 92-103
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/06/08
    ジャーナル フリー

    本稿は、社会学の総合学術誌『ソシオロジ』のエートスとシステムを、いくつかのデータを通して考察し、今後の学術誌のありかたについて考えてゆくための一助となる資料を提供することをめざす。2.では『ソシオロジ』のエートスとしての「同人誌の精神」と、それを実現するための査読システムとの関係について、基礎的な情報を整理する。3.では、『ソシオロジ』と『社会学評論』の比較により社会学の研究方法のトレンドを分析した先行研究を通して、『ソシオロジ』の特性を探る。4.では、『ソシオロジ』と関西社会学会の機関誌『フォーラム現代社会学』を計量テキスト分析等の方法によって比較し、同様に、『ソシオロジ』の特性を探る。5.では、『ソシオロジ』192~197号の「編集後記」に注目し、計量テキスト分析によって、同人誌のエートスと査読システムとの関係がはらむ緊張関係についての編集委員の意識を分析する。最後に6.では、以上の分析を踏まえて、今後の学術誌のありかたへの展望として、査読システムに内在する権力関係への反省作用について考察する。

  • 馬渡 玲欧
    2022 年 21 巻 p. 104-115
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/06/08
    ジャーナル フリー

    「新しいパラダイムにもとづく議論、大胆な冒険を行うための開かれた学術誌」を目指して刊行を続けてきた『ソシオロゴス』は、今どのような位置にいるのか。本稿では、『ソシオロゴス』の論文掲載者や査読者に関する基本的な検討をもとに、同誌の「エートスとシステム」の変遷を示す。その変遷の見通しを示すならば、同誌は教員の関与を離れた、東京大学社会学研究室の博士課程院生による「自主管理」的な研究発表媒体から、「若手研究者の公共財」として、その役割を変化させてきた。さらに、近年は各投稿者の専門性を追求するかたちで査読審査制度の運用実践が営まれている。

    同誌の今後の展望として、「(若手)研究者の公共財」としてのシステムを維持しつつ、幅広いアクターの関与する新たな「自主管理」のためのエートスを模索することが、まずは求められる。

  • 高橋 薫
    2022 年 21 巻 p. 116-125
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/06/08
    ジャーナル フリー

    本稿は英国の社会学系学術誌『The Sociological Review』の理念及び運営形態の概要について、筆者が編集事務の立場・経験から得た知見を共有し、学術誌編集及び査読プロセスの可視化を図ることを目的とする。『The Sociological Review』は1908年に刊行された英国で最も古い歴史を持つ社会学系学術誌のひとつである。本稿ではまずその沿革・組織形態及びジャーナルの概要を紹介し、理念を実現させるための工夫がいかに運営システムに反映されているかを明らかにする。次に『The Sociological Review』が掲げる二つの編集戦略(EDI:Equality, Diversity & Inclusionと国際化)をとりあげ、国際学術誌として包摂的な学術コミュニティの形成を目指すその現在進行形の取り組みを紹介する。後半では筆者が査読・編集プロセスの現場で得た気づきから、学術界を取り巻く課題についての私的な所感を共有する。『The Sociological Review』の活動を通して筆者が学ぶことは、学問の役割を広義で常に問い続ける視野の広さと、社会の変化を読みとり改革を続ける柔軟な姿勢の重要性である。本稿が学術誌及び研究者個人が論文投稿・出版の先の社会に対して担う責務や可能性についての議論を展開する機会となることを期待したい。

  • 『フォーラム現代社会学』の20年―学術誌の標準と地域学会の課題―
    永井 良和
    2022 年 21 巻 p. 126-131
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/06/08
    ジャーナル フリー
  • 学術誌の役割と査読に託されるもの―精神(エートス)と制度(システム)の連動した変化に向けて
    松谷 実のり
    2022 年 21 巻 p. 132-138
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/06/08
    ジャーナル フリー
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