フォーラム現代社会学
Online ISSN : 2423-9518
Print ISSN : 1347-4057
特集 2010年代の政治と権力―何が破壊され、何が生まれたのか?
大都市の「草の根保守」は変わったのか
―「大阪維新の会」の地域政治の社会学―
丸山 真央
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2021 年 20 巻 p. 52-65

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抄録

本稿では、2010年代を通じて大阪府・市政で大きな影響力をもった「大阪維新の会」を素材に、2010年代の地方政治の構造変化の一端を明らかにする。戦後日本の保守政治の支持基盤のひとつに、都市部では町内会があり、自営業者層を中心に担われるさまは「草の根保守主義」と呼ばれてきた。町内会をはじめ、かつて政治的に力をもった中間集団は、政党にせよ政治家後援会にせよ、近年、凝集力の低下が指摘されている。のみならず、ポピュリズム研究で指摘されるように、ポピュリスト政治家は、こうした中間集団を回避して、マス・メディアやソーシャル・メディアを活用して有権者から直接支持を調達する政治コミュニケーションを展開している。維新の大阪市政でも、既存の町内会が「政治マシーン」と批判され、補助金制度の改革や新たな地域住民組織の設立が進められた。我々の調査によると、そうした地域住民組織政策のもとで、これまで「草の根保守」層の中核を形成してきた町内会の担い手層の一部が、維新支持者に鞍替えしつつある。しかしそれはまだ多数でなく、またその支持も必ずしも堅いものではない。維新は、中間集団に統合されない流動的な無組織層の支持を獲得する一方で、既成の保守政党を支えてきた固定層である「草の根保守」の制度的基盤を破壊して、「中抜きの構造」と呼ばれるような地方政治の新たな構造を生みだしてきた。2010年代の地方政治は、そうした新たな構造の上で展開してきたといえるが、同時に、そうした構造が孕むデモクラシーの課題も浮き彫りにしてきたと考えられる。

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© 2021 関西社会学会
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