フォーラム現代社会学
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特集Ⅰ 世代論から見た日本社会
産業・労働問題と世代論 : 「豊かさ」の産業間格差
藤本 昌代
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2007 年 6 巻 p. 25-34

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抄録
本稿は就業者の「豊かさ」を規定する要因について産業間比較を行っている。分析の結果、明らかになったことは以下の4点である。1つ目は、経済的豊かさ(年間所得)と生活時間のゆとりのなさ(年間総実労働時間)の産業分布を分析したところ、年間所得が高い産業は労働時間が短く、年間所得が抵い産業は労働時間が長い傾向にあり、所得と労働時間は負の相関関係が見られたことである。2つ目は「時給」(年間所得/年問総実労働時間)と学歴、事業所規模による産業間比較を行ったところ、産業間で学歴効果と事業所規模効果の現れ方が異なるということである。「金融・保険業」の高所得系産業は事業所規模が小さくなっても一貫して大卒者の方が高卒者よりも「時給」が高いが、「製造業」は大企業の高卒者の方が中規模企業の大卒者よりも「時給」が高かった。3つ目は「金融・保険業」の高卒者の給与は高く、「製造業」の大卒者の「時給」は低く抑えられがちであることから、各産業の就業者のうち大多数を占める就業者の学歴の給与水準に少数派が引き寄せられる傾向があるという「マジョリティの引力」現象が起こっていることである。4つ目は「時給」と学歴、事業所規模による世代間比較を行ったところ、世代間で学歴効果と事業所規模効果の現れ方が異なるということである。これら4つの点から「豊かさ」は各産業、各世代により規定要因が異なるということが明らかになったのである。
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© 2007 関西社会学会
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