抄録
今日、NGO・NPOやボランティア活動は、新しい公共性の担い手として注目されると同時に、ネオリベラリズムへの動員ではないか、と懐疑されてもいる。では、ネオリベラリズムに動員されない形でのボランティア活動は、どのように可能なのだろうか。本稿は、今日「リスク」として捉えられている非正規移民の支援に携わる人びとへのインタビューを通して、彼らが、自らと非正規移民をともに含む〈社会〉をどのように仮構し、また、それを参照しながら、両者の関係性をどのように意味づけているかに着目することによって、この問いに答えることを目的としている。そこから明らかになったことは、支援者たちは、超越的・普遍的に「移住者の人権」を主張するというよりもむしろ、日常の支援活動で移住者と対面的な接触をするなかで、自身と移住者をともに含むより大きな〈社会〉を仮構し、また、それによって両者の関係性を意味づけているということである。また、その〈社会〉の想像力は多様なものであり、本稿では、それらを四つの視点から紹介した。さらに、これらの想像力は、移住者との対面的な関係のなかで常に問い直されてもいる。つまり、これらの想像力は、そのどれもが一つだけではあらゆる非正規移民をそこに位置づけるには十分ではないが、複数の併用と恒常的な問い直しのなかで、非正規移民と自らを含むより大きな〈社会〉が仮構され続けているのである。