フォーラム現代社会学
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論文
アメリカ社会学史における量的調査と質的調査 : 初期シカゴ学派およびアーネスト・W・バージェスの軌跡が照射するもの
鎌田 大資
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2008 年 7 巻 p. 114-125

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抄録

初期シカゴ学派の社会学者たちは19世紀から20世紀の変わり目に、世界ではじめて大学での社会学の制度化を勝ちとった。彼らの営みを画期としてその前後で社会学における実証主義的な知の生産と蓄積、すなわち社会調査に向かう体制の変遷が認められる。19世紀中盤の社会学の発祥以来、総合哲学の頂点に冠せられる社会学という位置づけが生まれ、1892年開設のシカゴ大学に社会学が設置されてしばらくは同じ形での模索がつづく。そしてパークとバージェスが協同した学生指導により、また『科学としての社会学入門』(1921)での移民周期説、『都市』(1925)での同心円理論、自然地域概念などから枠組みを得て、1925年ごろには一定の基準のもとに都市シカゴに関する社会調査の知見を蓄積する調査研究体制が整備される。だがやがて初期シカゴ学派の凋落に伴い、量的社会心理学のサーベイ調査を主流にすえながら傍流として質的社会調査も継続される、量的、質的という二極分化をともなった現行の調査研究体制の祖形が成立した。本稿では、シカゴにおける都市社会学の形成に大きく貢献しながら、主流派の量的社会心理学への移行にも努力したバージェスの活動を取りあげ、今後、質的、量的調査の設計や知見について考察するためのインプリケーションを探る。

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© 2008 関西社会学会
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