2025 年 20 巻 p. 31-48
本稿の目的は,協同学習を基盤としてデザインされた授業活動が,大学生の大学での学びに対する意識を自律的・主体的なものにするのかどうか,また,その授業活動に参加した大学生がどのような学びを得るのかを明らかにすることである。そのため,大学の授業において,100分7回の授業活動を実施し,事前・事後で実施した「日本で多文化共生社会を実現していくために,大学はどのような場所であるべきか,大学での学びはどうあるべきか」という問いに対する自由記述を①「他律的提案」,「自律的提案」の量により検証するとともに,②活動の前後でそれぞれの提案内容がどのように変化したかを質的に検証した。その結果,協同学習を基盤としてデザインされた授業活動は,大学生の学びに対するイメージを他律的,自律的どちらにおいても広げること,大学生の他者に対する関わり,学びに対する自己の責任などについての意識を高めることが示された。このことは,協同学習が知識やスキルのみならず,学習者の学びに対する意識や態度を変容させた結果であると推察された。