2018 年 85 巻 1 号 p. 1-12
本稿の目的は、ベルナール・スティグレールの注意論の検討を通して、注意とメディアの関係を考察することである。メノンのアポリアを端緒とし、tentionという言葉を基軸に注意(attention)について考察するにあたって、スティグレールはフッサールの過去把持(Retention)概念を代補の論理から読み替えていく。それによってフッサールが看過した忘却を意識の起源的な働きとして据えるとともに、忘却を代補するものとしてメディアが注意にとって必要不可欠であることを示す。