教育学研究
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論文
  • 「政治教育」と「考える農民」の育成に着目して
    佐藤 洋希
    2023 年 90 巻 3 号 p. 409-421
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/13
    ジャーナル フリー

     本稿では、占領期の日本放送協会松山中央放送局管内における「ラジオの集い」の実施内容の形成過程を跡付けた。当初、同管内の「ラジオの集い」は、その「公民教育」の射程として、CIEや日本放送協会の関心事であった「政治教育」を強調していた。一方で、その後、愛媛県の社会教育課や農業改良課と結びつくことによって「考える農民」の育成にも取り組まれていった。こうした取り組みの総括的な団体として同管内では1952年に「ラジオの集い」連合会が結成されるに至ったのである。

  • 生涯学習社会における知へのアクセシビリティ
    内田 良, 長谷川 哲也, 上地 香杜
    2023 年 90 巻 3 号 p. 422-434
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/13
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は、公共図書館をだれが利用しているのか、またそれはだれに利用されるべきと考えられているのかについて、平等利用の観点から大規模ウェブ調査の分析をもとに検証することである。分析の知見は次のとおりである。第一に、図書館利用には学歴がもっとも強い影響力をもっていた。第二に、非大卒者よりも大卒者のほうが、また滞在型の新しいサービスへの期待度が高い者のほうが、利他的に公共図書館の存在意義を重視していた。

  • 「教育的想像力」概念に焦点を合わせて
    岡村 亮佑
    2023 年 90 巻 3 号 p. 435-447
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/13
    ジャーナル フリー

     本稿は、米国のカリキュラム研究者E. W. アイズナーの所論を検討するものである。本稿では、彼が従事したカリキュラム開発プロジェクト(ケタリング・プロジェクト)から主著『教育的想像力』へと至る過程を辿り、従来看過されてきた「教育的想像力」概念に着目することによって、彼のカリキュラム構成法における設計主義の側面を描き出した。このことから、カリキュラム構成における設計主義と創発主義は二律背反ではなく、教室文脈に根ざしたカリキュラム改善プロセスにこそ創発主義の要点があることを示した。

  • 法制度的類型と量的動向
    山﨑 洋介
    2023 年 90 巻 3 号 p. 448-460
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/13
    ジャーナル フリー

     本稿の目的は、公立小中学校の県費・政令市費負担の非正規教職員の法制度的類型化と量的動向調査により、概念整理と実態把握に貢献することである。2020年地公法・自治法改正後の任用変化をふまえ、実態に基づき法制度的に類型化した。さらに、文科省「教職員実数調」を基礎データとする類型ごとの人数の経年変化調査を行い、①正規の非正規化、②常勤の非常勤化、③再任用の急増、④代替補充の増加という特徴を明らかにした。

  • 物語的構成によるライフストーリー
    伊勢本 大
    2023 年 90 巻 3 号 p. 461-472
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/13
    ジャーナル フリー

     教師の働き方に大きな注目が集まっているにもかかわらず、研究では未だ十分な広がりがみられない。そこで本稿は、中学教師を対象としたライフストーリー・インタビューにおいて、休職へと至る過程がどのような物語として構成されるのかを描く。これは、先行研究が有してきた死角を、教師のライフヒストリーに関わる研究でも抱えてきた課題として重ね(再)設定することにより、日本の教職をめぐる労働問題についての新たな研究と議論の可能性をひらく、先駆的な試みである。

  • 社会正義を志向する主体としてのノルウェーの教師教育者に注目して
    北山 夕華
    2023 年 90 巻 3 号 p. 473-484
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/13
    ジャーナル フリー

     本研究は、ノルウェーの教師教育者の省察の過程に注目し、多様性に応じる教師教育の論点と実践的な課題との接続を考察した。教師教育者の語りからは、多様性に応じる教師教育は、表面的な異文化理解や多様性への寛容の促進にとどまらず、社会構造に埋め込まれた不平等を問う社会正義志向に下支えされた実践に包括的に取り組む必要性が示された。また、教師教育者の実践におけるこうした省察は、多様性に応じた教授法の個人レベルの改善だけでなく、学校文化や学校知の脱植民地化のための重要な過程となることが示唆された。

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