教育学研究
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論文
  • ―公教育の無償性を実現する教育費政策への展望―
    福嶋 尚子
    2025 年92 巻4 号 p. 536-547
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/04/03
    ジャーナル フリー

     家庭が負担する教育費が子どもの学習権を阻害している現状を分析し、公教育の無償性の原理に基づいて教材費政策を再評価することが本稿の目的である。家庭の教育費負担は保護者の課題として扱われがちだが、憲法や国際人権規約で基本的人権とされている子どもの学習権との関連で再検討する必要がある。さらに、昨今の教育費をめぐる政策も子どもの学習権保障を視点としてその意義と課題をとらえ返し、その具体的あり様を検討する。

  • ―子どもの権利保障に取り組む社会の実現に向けて―
    伊藤 健治
    2025 年92 巻4 号 p. 548-560
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/04/03
    ジャーナル フリー

     子どもの権利条約第12条の意見表明権は、子どもの最善の利益を図るための中核的な権利である。近年、子どもの意見聴取と政策への反映が重視され、子どもの権利への関心が高まっているが、社会に浸透させるためには、子どもの権利への理解を深めることが重要である。本稿では、他者に依存せざるを得ない子どもの存在をケアの論理から検討することで、関係的権利としての子どもの権利を保障するための社会システムの在り方を提示する。

  • ―関係的権利論とケイパビリティ・アプローチの観点から―
    山岸 利次
    2025 年92 巻4 号 p. 561-573
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/04/03
    ジャーナル フリー

     本稿は子どもの権利条約が<子ども―大人>関係に要請する規範的原理を意見表明権及び「発達への権利」から明らかにするため、意見表明権を「関係への権利」と解釈する関係的権利論とケイパビリティ・アプローチによる「発達への権利」条項の解釈を検討した。これらの検討を通じて、意見表明権は子どものケイパビリティという観点から解釈されるべきこと、権利として保障されるべき発達は子どもの<ケイパビリティ―キャパシティ―エージェンシー>のダイナミズムにおいて展開されるものであるということを結論づけた。

  • ―修得主義の歴史性に注目して―
    木村 元
    2025 年92 巻4 号 p. 574-587
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/04/03
    ジャーナル フリー

     人口変動(動態)は長期的に教育のあり方にかかわり、制度や実践が成り立つ基盤を支えている。本稿では、人口動態、なかでも教育人口動態を踏まえて、戦後日本の教育の権利としての学力保障の展開を捉える。その際、教育課程の履修認定の原理である修得主義の歴史性に注目する。中教審答申「令和の「日本型学校」の構築を目指して」において修得主義と履修主義が取り上げられ、そのバランスが政策の課題として提起されているが、2つのカテゴリーの形成と展開に着目してこの概念を反省的に捉え直し、こんにちの教育学のカテゴリーを巡る課題について考察する。

  • ―「問題単元課程」における「活用」概念―
    加藤 優汰
    2025 年92 巻4 号 p. 588-600
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/04/03
    ジャーナル フリー

     本稿では、戦後新教育期に梅根悟が構想した三層構造論の中層「問題単元課程」に着目し、新史料に基づく「春日井プラン」の実践分析をとおして、その構造と性格を検討した。「問題単元課程」は〈探究型問題単元〉と〈習得型問題単元〉に分類されており、両者がそろって初めて三層の中層として媒介機能を果たす。このような「活用」概念のカリキュラム構造上の複層性と媒介機能から、現代の「活用」型学習の再構築に資する手がかりを提示した。

  • ―愛知県における学校協議会の運営実態に着目して―
    鈴木 草営駒
    2025 年92 巻4 号 p. 601-613
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/04/03
    ジャーナル フリー

     本稿は、教育研究協議会の運用事例である愛知県における学校協議会の運営実態を明らかにすることで、戦後改革期における学校経営構想の地域的展開とその含意を解明するものである。会議録を中心素材とした分析により、愛知県では、校長と教員が共同して学校経営に参加できるよう学校協議会を運営していたという地域的展開を確認した。またその含意は、教員の参加を実践的に模索・展開したものと解されることを指摘した。

  • ―現代の自由学園初等部における経験主義―
    緩利 真奈美
    2025 年92 巻4 号 p. 614-625
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/04/03
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は自由学園初等部における「土と育つ」学びを参与観察と教師へのインタビュー結果の解釈を通じて解明し、農作物を育てる活動を中心にした経験主義教育が児童にもたらす学びの意義を明らかにすることである。結論として個別の経験的知識の蓄積を超えて、他者や社会との関係性をより深め、よりよく生きるための「生」の在り方に関与することが明らかとなった。

  • ―1950年代から1960年代における全国生活指導研究協議会の成立期を例に―
    徳本 百合子
    2025 年92 巻4 号 p. 626-638
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/04/03
    ジャーナル フリー

     本稿は1950年代から1960年代の民間の教育研究コミュニティにおける自律的研究の様態について、全国生活指導研究協議会と日本教職員組合の教育研究全国集会生活指導分科会との比較検討を行った。民間教育研究運動における科学化の志向、集団主義研究の拡大、行政の道徳教育課程に対抗する理論構築の要請を共通の背景としつつ、研究方針の相違によってコミュニティにおける研究様式の定型化と統制の様態が異なることを示した。

  • ―「多様性と統一性の両立」の問題圏へ―
    北村 佳誉
    2025 年92 巻4 号 p. 639-651
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/04/03
    ジャーナル フリー

     本稿は、バーナード・クリックの政治教育論における教育目的、そしてその構想を明らかにするものである。全体主義以降に政治と教育を重ね論じたクリックの思想は、彼が創案に関与した政治リテラシーの解釈に際し参照されるにとどまり、それを後背から支えているはずの論理、とりわけ政治の目的から導かれる教育/政治教育の目的やその構想の内実は十分に検討されてこなかった。そこで、初期の未公刊論文も参照しながら、クリックが政治教育においても「多様性と統一性の両立」を目的としたこととその理由、そしてそれを可能にする制度としての公教育を共和主義的な思考によって構想していたことを提示する。その構想に顕著な、教育をむしろ政治の規定因と定位する思考は、政治からの教育の自律性を求めてきた従来の教育学の議論に再考を迫るものとなる。

  • ―文部省学校教育局長・日高第四郎関連資料に焦点を当てて―
    中村 恵佑
    2025 年92 巻4 号 p. 652-662
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/04/03
    ジャーナル フリー

     終戦直後、日本の大学入試で行われた「進学適性検査」について、文部省の担当部局だった学校教育局の当時の局長・日高第四郎による日誌「日高ノート」と回顧録を中心に検証し、具体的な導入過程の一端を解明した。そして、従来分析されてこなかった、日高が実施に反対した理由や占領軍との問題認識の齟齬、実施方法に関する両者の妥協について考察した。

  • ―高校無償化政策と少子化の都道府県別影響(1990-2024)―
    相澤 真一, 眞鍋 元
    2025 年92 巻4 号 p. 663-673
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/04/03
    ジャーナル フリー

     本研究は、1990~2024年にかけての都道府県別の高校進学機会の構造の変化を、公立/私立高校の入学率・併願率等を用いて可視化・分析したものである。少子化と高校無償化政策によって、地域ごとに異なる影響がもたらされた過程を、階層線形モデルによって明らかにした。特に、無償化政策実施以降の進学パターンには、収束した変化の方向も見いだせた一方で、堅固に存在する都道府県ごとの進学機会配分構造の違いが見出された。本論は、この各都道府県の違いを踏まえた政策立案(EIPM)への貢献可能性を期するものである。

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