教育学研究
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論文
  • ―国立総合大学における因果効果の検討―
    鎌田 健太郎
    2024 年 91 巻 1 号 p. 1-12
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/06/21
    ジャーナル フリー

     1991年以降の大学改革は政府主導のもと大学システム全体を巻き込みながら進行したが、改革の効果検証は十分ではない。本稿では、大学教育改革の主眼であった初年次教育が大学生の学習に与えた影響を、出身階層による効果の異質性に留意しながら検討した。その結果、初年次教育の導入期においても、その後の改革期においても、初年次教育は学習意識・行動に影響しておらず、初年次教育が低階層出身の学生を補償するような効果を持つことも確認できなかった。

  • ―職業・学歴・経済階層に着目して―
    五十嵐 洋己
    2024 年 91 巻 1 号 p. 13-25
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/06/21
    ジャーナル フリー

     世界的に学校数が急増しているインターナショナルスクール(以下、「インター」と略記)の日本人家庭の学校選択と階層の研究は、年間授業料が高いことによる家庭の経済資源に基づく説明がなされてきた。インター初等部を選ぶ日本人家庭の事例研究の結果、職業、学歴、経済階層によってインターの選択の理由が異なることを明らかにした。既存の公教育内部の現象のみに着目してきた教育格差やペアレントクラシーの研究に、グローバル教育市場の影響を含めた研究の必要性を提起した。

  • —トランスナショナルな危機対応に着目して—
    芝野 淳一
    2024 年 91 巻 1 号 p. 26-39
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/06/21
    ジャーナル フリー

     本稿は、コロナ禍に日本人学校に赴任していた教員への聞き取りに基づき、かれらの危機対応をめぐる経験をトランスナショナリズムの視点から明らかにするものである。本研究の知見は次の2点である。第一に、教員は流行初期において、現地の防疫措置に伴う学校閉鎖、新規派遣者の日本待機による教員不足、在留邦人の一時帰国に起因する児童生徒の離散といった危機に直面していた。第二に、これらに対応するため、教員は手持ちの資源を動員しながらトランスナショナルな教育実践を創造していた。具体的には、日本国内の教員や他国の日本人学校教員と連携して休校時の授業を組み立てたり、現地組と日本待機組の教員が協働して教員不足を解消する学校システムを構築したり、既存の教育課程や時間割を拡張しながら離散した子どもの多様なニーズに応えたりしていた。

研究ノート
2023年の教育改革案・調査報告等
  • 中村 恵佑
    2024 年 91 巻 1 号 p. 51-66
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/06/21
    ジャーナル フリー

     2023年5月8日に、新型コロナウイルスの感染症法上の分類が、「2類相当」から季節性インフルエンザと同じ「5類」に引き下げられたことで、長期間に及ぶ「コロナ禍」において停滞していた学校現場での諸活動も次々と再開されていった。このように、2023年はコロナ禍以前の正常な教育活動を取り戻す契機となったという意味で希望の年だったと言えるだろう。一方、少子化の加速やこどもの貧困、児童生徒の自殺者数・不登校者数やいじめの認知件数・重大事態数が過去最多を更新したこと、教員の多忙化、教員不足、教員による性犯罪の多発、生成AIの教育現場での利用方法等、前年から蓄積されてきたものも含め、全てのこどもに教育を受ける権利を保障する上でも速やかに対策を講ずべき様々な教育課題が取り沙汰された年でもあった。

     こうした問題に対して、こどもに関する政策を総合的に推進する「こども家庭庁」が内閣府の外局として設置されたことを始め、文部科学省(文科省)を中心とした、自殺・不登校・いじめ対策、生成AIの利用方法、教員の長時間労働解消等に関する制度改正の実施や通知等の発出、中央教育審議会(中教審)質の高い教師の確保特別部会による教員の働き方改革に関する緊急提言の公表、各自治体による教員確保を目的とした教員採用の早期化といった施策等、本格的な対応が次々と発表され実施に移されている。未だ不十分と思われるものも多くあるが、こうした様々な改革を2024年以降も実効性を持って継続していくこと、そして、我々教育学研究者がそれらの動向に注目して検証や提言等を積極的に行っていくことが重要である。

     以下、2023年1~11月の教育改革案・調査報告等については、『内外教育』(時事通信社)の「教育界の重要日誌」と『教職研修』(教育開発研究所)の「教育備忘録」を、12月については、「教育業界ニュースReseEd(リシード)」(https://reseed.resemom.jp/)、「教育新聞」(https://www.kyobun.co.jp/)、「NHK『教育』ニュース一覧」(https://www3.nhk.or.jp/news/word/0000034.html)に掲載されたトピックを取捨選択し、それらの説明・表現を基に適宜修正・加筆して執筆した。その際、できる限り各省庁・自治体・団体のウェブサイト等で情報の確認も行った。

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