杏林医学会雑誌
Online ISSN : 1349-886X
Print ISSN : 0368-5829
ISSN-L : 0368-5829
迷路性運動失調, 難聴, 髄液細胞増多を呈した水痘・帯状疱疹ウイルス感染症の 1 例
河合 伸沢口 義康若林 行雄小池 秀海吉野 佳一
著者情報
ジャーナル フリー

1980 年 11 巻 4 号 p. 421-425

詳細
抄録

32歳の生来健康な男性。気道感染の経過中に右耳痛, 回転性眩暈, 嘔吐を生じ, 更に運動失調による起立・歩行障害, 難聴をきたした。また右側の三叉神経痛, 右上肢から後頸部にかけての異常知覚を訴えた。右耳介部から後頸部にかけての疱疹の出現と血清抗体価の上昇から水痘・帯状疱疹ウイルス感染症と診断した。発症から約一ケ月後には理学的所見では軽度の迷路性運動失調症と左方視の際の水平性眼振を残すのみとなったが, 髄液では細胞増多が認められた。聴力検査では右側において高音部の低下と補充現象が明らかで, 温度刺激検査では反応が欠如していた。eye-tracking test (ETT), optokinetic pattern test (OKP)は正常であった。頭・頸部の帯状疱疹では顔面神経が最も障害されやすいといわれ, Ramsay Hunt症候群が有名であるが, 本例では内耳神経障害を主体とし, 顔面神経麻痺を伴わない点が注目された。このような症例は文献的にも極めてまれであることを強調した。

著者関連情報
© 1980 杏林医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top