杏林医学会雑誌
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一過性に著明な肝腫大を呈した糖尿病性ケトアシドーシスの一症例
野崎 道郎岡本 新悟楊 国英今泉 啓子今村 倫嗣板垣 英二斉藤 昌三村川 章一郎高村 光子
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1981 年 12 巻 1 号 p. 55-59

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抄録

44歳女子。感冒による食欲不振から, 従来続けていたインスリン注射を中止したためにケトアシドーシスに陥り入院した。補液と大量のインスリン投与により速やかに回復したが, 経過中, 圧痛ある著明な肝腫大を生じ肝機能障害を伴った。良好な血糖コントロールが得られるとともに肝腫大は消失し, 肝機能も正常化した。インスリンは, 肝においてグリコーゲン合成酵素の活性化により直接に, またcyclic AMP生成阻害により間接にグリコーゲン沈着を増加させる。本例にみられた一過性の肝腫大は, 少なくともその一部において, 大量のインスリン投与により肝にグリコーゲンが異常に沈着したことによると思われる。糖尿病性ケトアシドーシスの治療にあたっては近年指摘されて来た様に, 初期から少量のインスリン持続投与が適切であると考えられる。

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© 1981 杏林医学会
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