杏林医学会雑誌
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全身性進行性硬化症 (PSS) の腎障害の成因を考察する上に示唆に富む PSS の一剖検例
下村 文彦副島 昭典井上 明夫吉田 雅治北本 清長沢 俊彦
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1981 年 12 巻 3 号 p. 293-298

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抄録

症例は61歳, 女子・死亡1年前よりレイノー症状, 多発性関節痛出現, 11カ月前より脱毛, 前胸部不快感とともに皮膚の硬化が始まり, 皮膚生検にてPSSの診断が下された。3カ月前より労作時息切れ, 37∿39℃の発熱が認められ, 1カ月前より高血圧(190/120), 蛋白尿が出現し, 検査所見上血漿レニン活性の上昇, 抗DNA抗体, リウマチ因子陽性, 血中免疫複合体高値を呈し, 全身浮腫, 心不全, 腎不全を起こして死亡した。剖検上腎は130g, 110gと肥大し, 組織学的に腎皮質の無数の梗塞巣, 細小動脈の著しい内腔増殖, vas afferensの硝子様変性を認めた。従来の報告では, 強皮症腎の急性型の成因は免疫複合体の血管及び糸球体への沈着との考えが有力である。本例では臨床的に著明な免疫異常を認めたが, 免疫組織学的に免疫複合体の沈着は認められず, その成因はむしろ免疫異常に端を発した細小血管内凝固異常によると推定される点が特異的である。

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© 1981 杏林医学会
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