杏林医学会雑誌
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肝硬変症の腎障害 : 臨床病理学的検討
田中 宇一郎
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1993 年 24 巻 4 号 p. 529-539

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抄録

肝硬変症144例を対象とし,肝硬変症に伴う腎障害,特に肝硬変性糸球体硬化症について検討し,以下の結果を得た。1)異常尿所見を49%に認めた。2)腎症候陽性例では,反復性血尿・蛋白尿を36%,慢性腎炎症候群を36%,ネフローゼ症候群を16%,急速進行性腎炎症候群を10%に認めた。3)組織学的に糸球体病変を87%に認めた。従来報告されているメサンギウム病変に加え,膜性増殖匪腎炎様所見を多く認めた。4)肝硬変性糸球体硬化症の病変の程度は,肝硬変症の罹患歴や重症度に相関していた。5)腎不全を呈した肝硬変症のうち31%が肝硬変性糸球体硬化症が主因と思われる腎不全であった。肝硬変症に対する治療の進歩により肝硬変症の生命予後は改善傾向にあるが,これに伴い重症の肝硬変性糸球体硬化症を伴う症例の増加していることが明らかにされた。

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© 1993 杏林医学会
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