1997 年 28 巻 1 号 p. 43-50
目的:血小板依存性トロンビン生成能の多寡と急性冠動脈症候群acute coronary syndrome (ACS)の重症度との関連について検討した。対象と方法:対象は救命救急センターに入院した急性心筋梗塞acute myocardial infarction (AMI)患者64例と不安定狭心症unstable angina pectoris (UAP)患者15例。対照群は健常者31例を用いた。これらACSの多血小板血漿を採取し,血小板上のトロンビン生成能を測定した。AMIについては同時に冠動脈の重症度をGensini's Scoreで評価した。結果:トロンビン生成能は対照群に比較しAMI群及びUAP群で有意に亢進した(p<0.01)。また,AMI群におけるトロンビン生成能と冠動脈の重症度には有意な正の相関が認められた(p<0.01)。UAP群のトロンビン生成能は症状の安定化により正常化した。凝固線溶系マーカーについては,AMI群及びUAP群にてともに有意に先進した(p<0.01)。結論:ACSにおいてトロンビン生成能は有意に先進し,トロンビン生成能の亢進がACS発症の一因となっている可能性が示唆された。このトロンビン生成能の完遂は冠動脈の重症度とは正の相関を認め,病態の安定化とともに正常化した。