杏林医学会雑誌
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保存1週間以上の赤血球輸血は脱血性ショック・ラットの嫌気性代謝を遷延させる
武田 秀輔
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1998 年 29 巻 3 号 p. 283-291

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抄録

輸血センターと同様の方法で保存したラット赤血球を,脱血性ショックのSDラットに20ml/kg輸血し,血液保存期間と受血ラットの組織嫌気性代謝との関係を検討した。保存しない赤血球を輸血した群を0週群(n=17),保存1週,2週後の赤血球を輸血した群を各々1週群(n=10),2週群(n=9)とした。受血ラットの血中乳酸値は脱血後,3群とも11mg/dl前後から約19mg/dlに上昇した(p<0.01)。0週群では赤血球輸血後,95分間,脱血15分後と比べ有意に乳酸値が低下した(p<0.05)。1週,2週群では赤血球輸血35分,65分後に血中乳酸値が一旦,有意に低下した(p<0.05)が,95分後,再び上昇し,脱血15分後と比べ差がなくなった。一方,赤血球の変形能の指標である赤血球濾過圧は保存1週後から保存前より有意に高くなっていたが,輸血に使用された保存赤血球の濾過圧と輸血95分後の全受血ラットの血中乳酸値には正の相関が見られた(n=36,R=0.313,p=0.004)。以上の結果から出血性ショックに対し,保存期間が1週間以上の赤血球を輸血すれば嫌気性代謝が遷延するといえる。

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© 1998 杏林医学会
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