1998 年 29 巻 4 号 p. 535-545
近年,exocytosisに関係している蛋白質群が次々と明らかにされてきており,syntaxinはシナプス開口放出に必須な膜蛋白であると考えられている。哺乳類神経細胞においては,2つのアイソフォーム,syntaxin 1A/HPC-1とsyntaxin 1Bが発現しているが,それぞれの生理作用を解析した研究はなされていない。そこで,micro-island法により培養したラット海馬神経細胞にパッチクランプ法を用いて特異的抗体を投与し,自己回帰性シナプス(オータプス)伝達に対する効果を解析した。その結果,それぞれに対する特異的抗体を単独で投与した場合でもシナプス開口放出を増強させることが明らかになり,生体内においてsyntaxin 1A/HPC-1及びsyntaxin 1Bは協同的にシナプス開口放出の抑制的制御に関与していることが示唆された。