保健所における精神障害者の家庭訪問活動の指導に関して, 実際に経験した訪問経過を症例報告させたが, その報告をとおしての指導経験から次の様な問題点が明らかになった。保健婦は, 訪問対象が精神障害であるのかどうか, 病院に紹介すべきかどうかに考えの重点を置き, 悩める人間, 家族をどうしたらいいかにあまり注意していないように思えた。また人間, 家族を, その示す異常症状だけから判断しようとする傾向にあった。その他精神障害はよくなるのか, また家族関係は心理的に影響があるのか等が問題になった。これらの経験から, 保健婦指導の中心問題点は, 精神障害の知識を与えると言うよりも, 近代精神医学の中心問題である, 悩める人間, 家族をどうするかの問題に焦点を置くべきである事が明らかになった。