DSM-IV (Diagnostic and Statistical Manual for Mental Disorders, 4th Edition:)で大うつ病エピソードと診断された患者23例を対象にsTMS (single pulse transcranial magnetic stimulation)を施行し,その臨床効果につきHAM-D (Hamilton Rating Scale for Depression)を用い検討した。なお,抗うつ薬の用量はsTMS施行1ヵ月前より施行後15日まで固定した。その結果, sTMSによってHAM-D得点は, 1例を除く全例で減少した。sTMSの効果は,主症状である抑うつ気分や精神運動抑制を含む幅広い範囲にわたってみられ,罪業感,自殺などの治療上とくに問題となるものについても,よい効果が観察された。また,比較的難治とされる,高年齢のものや病相回数の多いものに対しても効果を示した。どの例にも,みるべき副作用は認められなかった。以上の結果から, sTMSはECT (electroconvulsive therapy)と比較し遜色ない効果を有し,かつ,より広い範囲のうつ病患者に適応できることが示唆された。