杏林医学会雑誌
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ラットにおける一過性前脳虚血前後のグルタチオンおよび窒素酸化物の動態
坂本 英明
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2002 年 33 巻 4 号 p. 351-357

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抄録

脳では一過性虚血後,フリーラジカルが発生するが,同時に発生する捕捉物質により不活性化されると考えられている。著者は脳虚血再灌流後のフリーラジカルである窒素酸化物の発生とその捕捉物質であるグルタチオンの間に関連があると仮説を立て,以下の研究を行った。フィッシャー種ラット(CDF344)12匹に対し,一過性前脳虚血を作成した。大脳皮質に微小灌流用プローブを留置し,25分おきに透析液を回収した。得られたサンプルからNO_2^-, NO_3^-,還元型グルタチオン(GSH),酸化型グルタチオン(GSSG)を測定した。NO_3^-は虚血時の63.5±14.5(以下,平均±標準誤差)μMから再潅流中34.9±4.6μM(25分値)へ有意に減少した(p<0.001)。一方,NO_2^-は変化しなかった。GSHは虚血開始後0.24±0.07μMから急速に上昇し,再灌流25分で6.64±1.64μMをピークに減少した。GSSGは虚血前3.07±1.00μMであったが,再灌流開始後上昇し,50分で8.17±2.35μMとピークに達した。再灌流25分後のNO_3^-濃度とGSH濃度の間には逆相関が認められた(r=-0.88, p<0.001)。以上の結果より,虚血再灌流初期ではGSHが放出され,NO_3^-を捕捉すると考えられた。

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© 2002 杏林医学会
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