杏林医学会雑誌
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原著
エストロゲン様作用物質・フェノールレッドによってもたらされる乳癌細胞MCF-7の遺伝子発現レベルの変動
権藤 秀樹土屋 克巳阪井 哲男永松 信哉脇坂 晟
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2007 年 38 巻 2+3 号 p. 37-50

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抄録
乳癌細胞の増殖に対するエストロゲンの作用機序を解明するためのモデルとして,乳癌細胞(MCF-7)培養系にエストロゲン作用を有するフェノールレッドを加えて,その遺伝子発現に及ぼす影響について遺伝子発現アレーを用いて解析した。フェノールレッド添加MCF-7細胞培養系と非添加培養系とを作成した。それぞれ系についての対数増殖早期と晩期の2つの時期において細胞を回収してmRNAを抽出した。このmRNAから,逆転写酵素を用いて[33P]-標識cDNAプローブを作成し,ナイロン膜上のcDNA発現アレーとハイブリダイゼーションを行った。その結果をANOVAで解析したところ,アレーに存在する1176遺伝子のうち危険率3%で,フェノールレッド添加と培養期間で交互作用ありとされた遺伝子は31個であった。フェノールレッドによる影響が見られたのは,シグナル伝達関連遺伝子群では,HTR1D,proenkephalin B,ACHEで発現が増大し,COMTでは抑制がみられた。転写関連遺伝子群では,relB,TEF1で発現の増大が,BARD1,IRF2では低下がみられた。この様な遺伝子発現レベルの変動は,フェノールレッドの細胞増殖促進作用を示すものと推定される。
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© 2007 杏林医学会
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