抄録
現代の人間形成論においては、「美」「倫理」という言葉によって、人間形成をめぐる現代的状況を解明しようとする議論や人間形成論の可能性を提起しようとする議論が少なからず見受けられる。だが「美」と「倫理」の概念の接点をさぐりながら人間形成論の現代的射程を探る共同研究の試みは、いまだ豊かに展開されているとはいいがたい。
教育哲学会第四八回大会 (香川大学) において「美」と「倫理」の概念に関心を寄せる若手研究者が集まり、「美的・倫理的人間形成論の現在性をめぐって」と題したラウンドテーブルを開催した。ドイツ語圏の美的人間形成論 (白銀・久保田) 、英語圏の道徳や倫理を扱う人間形成論 (奥野・村田) 、ドイツ教育思想史における「美」「倫理」概念 (小野) といった各々の関心から、現代の「美」「倫理」概念の人間形成論的射程を議論した。以下はラウンドテーブル当日の提案者四名 (村田、久保田、奥野、白銀) と指定討論者 (小野) による報告である。本論の最終的な文責は企画者 (白銀) が負うが、それぞれの項目は担当者が執筆したものである。