抄録
一九九二年の国連環境開発会議(地球サミット)を明確な契機として登場した「持続可能性(sustainabihty)」の概念は、今日、環境問題に関する取組のキーコンセプトとなっている。「持続可能性」の概念は、自然環境の保全・保護、それと並んで民主的な社会環境を要請している。自然環境の保全・保護が実現されるためには、そこに住む人々の基本的な人間的ニーズ(生命・人権の保障、安全な水や食料へのアクセスなど)の充足が不可欠であり、そのためには国内的にも国際的にも民主的な社会体制が必要なのである。こうした「持続可能性」の実現をめざす教育-「持続可能性に向けての教育(education for sustainabmty)」-が特に環境教育の領域で国際的に議論・実践されるようになっている-たとえば現在ドイツでは、連邦・州政府主導の「持続可能性に向けての教育」に関する学校教育プロジェクトが大規模に展開されている。日本でもこれに関する諸外国の議論・実践の紹介、また独自の理論研究・実践研究が徐々になされている。本書はこうした世界の流れのなかで、「持続可能性に向けての教育」の「基礎的な理論の構築」を試みようとするものである。