2023 年 2023 巻 53 号 p. 35-42
ゾウリムシ(Paramecium caudatum)は繊毛を使って遊泳を行っているが、その運動は昼夜で変化することが知られている。本研究では、ゾウリムシの日周変化や概日変化とそれに対するメラトニンの影響について、ゾウリムシの遊泳速度と方向転換の頻度、繊毛打の周期性を指標として調べた。ゾウリムシの行動の日周変化を解析した結果、暗期には遊泳速度が低下し、その時に方向転換頻度が増加して繊毛打の周期が長くなるという有意な変化が見られた。一方、恒暗条件におけるゾウリムシの行動を解析した結果、暗期にあたる時間には遊泳速度の低下と方向転換頻度の増加、周期の延長が見られた。そこで、哺乳類において体内時計の同調因子として知られているメラトニンを添加したところ、メラトニン群で遊泳速度が低下し、方向転換頻度が増加して繊毛打の周期が延長するという夜間と同様の行動を誘導することが確認された。これらの実験結果は、ゾウリムシには概日時計の役割をする機構が存在し、メラトニンが影響を与えている可能性を示唆するものである。