2022年末、中国における65歳以上の高齢者人口はすでに2億978万人になり、高齢化率が14.9%に達し、中国社会はいわゆる高齢社会に突入した。今後も高齢化の進展に伴い、高齢者が持続的に増加していくだろう。また、膨大な高齢者人口のうち、要介護高齢者数が5,271万人に達し、2030年には7,700万人以上に上る見込みである。中国では伝統的な家族介護が弱体化し、新たに私的介護である家族介護に代わる公的支援の仕組みを求める声が高くなった。中国版介護保険の実施に向け、 2016年から介護保険制度パイロット事業が始まった。目下、中国において国家クラスの介護保険パイロット事業の運用都市が29となり、省クラス(日本の県クラス)のパイロット事業運用都市を入れると、49になり、パイロット事業としての介護保険の被保険者数1.45億人にのぼっている。
本稿では、これまで国家クラスに指定された29のパイロット事業運用都市を対象に被保険者、要介護認定の評価基準、介護保険の財源、保険給付及びサービス供給システムの面の運用実態から分析を行い、各地の運用の運用の特徴と問題を指摘したうえ、制度設計の面から今後中国における介護保険制度の全国版の展開に提言を行いたい。
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