九州病害虫研究会報
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福岡県における山形産(庄内型)ニカメイガの飼育結果
立石 〓酒井 久夫野田 政春
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1976 年 22 巻 p. 94-99

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抄録

1973年から1975年まで山形産(庄内型)ニカメイガを福岡に移し,自然条件下で越冬させた越冬世代の蛹化前期間,第1回成虫の発生期,日長時間の異った時期にふ化した幼虫の日長と蛹化との関係,累代飼育の影響などを調べた。調査結果は次のとおりであった。
1.第1回成虫の発生期:自然条件下で越冬した山形産の蛹化期は3月下旬・4月上旬~4月下旬・5月上旬で,福岡産の4月下旬~7月上旬に比べると著しく早く,平均蛹化前期間は30.6日で福岡産に比べ40~60日短かった。第1回成虫の50%羽化日も山形産の5月2日に比べると福岡産は約50日遅れている。
2.ふ化時期の自然日長と蛹化:第1世代(5月4~18日ふ化),第2世代(6月26日ふ化)および第3世代(8月13~20日ふ化)にふ化した幼虫を自然日長,、室温下で飼育した場合,どの時期にふ化した幼虫も休眠に入ったが,長日(16時間)下では25℃および室温に関係なく休眠を回避した。
3.福岡の自然日長と休眠誘起:山形産を福岡の自然日長一室温下で飼育した結果によると,夏至の時にふ化した幼虫が休眠に入っていることから,休眠誘起臨界日長は15時間付近にあると推定される。したがって,福岡の自然日長一室温下で飼育すると,第1世代から常に休眠に入ることが考えられる。
4.山形産(庄内型)の生理的性質の安定性:第1世代第2世代で休眠に入った越冬幼虫の蛹化前期間は,西国型に属する福岡産に比較し著しく短く,顕著な差があることから,庄内型の生理的性質は保持されていると考えられる。また第1世代および第2世代で休眠に入った幼虫の中に,10月中,下旬に蛹化するものは,休眠の離脱が早いといわれている庄内型の性質に基づくものと推定される。
5,累代飼育の影響:1974年から1975年に累代飼育を行ったが,特に同系交配の場合,2世代目から悪影響が現われ,2,3世代で絶滅した。

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