九州病害虫研究会報
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屋外設置コンクリート枠内でのスクミリンゴガイに対するコイの増殖抑制
市瀬 克也栃原 正久
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2001 年 47 巻 p. 73-76

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抄録

屋外に設置したコンクリート枠(2m2)2枠に土30cmと水10cmを入れ,擬似的な水系環境とし,そこでのコイによるスクミリンゴガイ個体群調節について実験を行った。一方の枠には平均88.0±5.5SDmmのコイを6頭放し(A1),もう一方には164.3±7.3SDmmを3頭放した(A2)。貝は3階級(小:殻高が10mm未満,中:10-15mm,大:15mm以上)を区別し,各階級10頭づつ,各枠に放した。実験は4月から9月まで続け,この間,週4-6回,新しく産下された卵塊の大きさの測定とその表面より見える卵の計数を行った。また,週1回水を抜き,貝の大きさの測定を行った。7月から8月の1月間,A1よりコイを除去した。実験開始後1週間内で,A2の小貝は全ていなくなり,コイにより捕食されたと考えられた。これ以外の貝は生き残るか,コイの捕食ではないと考えられる原因で死亡した。実験期間中産卵された卵から孵化した貝は,どちらの水槽でも増加も成長も出来ず,一時的に発見された孵化貝は,発見後1週間以内にすべて不明貝となった。また,コイ除去期間中A1では孵化貝の増加と成長が起こったが,コイを戻すと,1週間以内でそれらは全て不明貝となった。実験中の総推定孵化貝数は,A1で2210頭,A2で3425頭と推定された。実験期間中の1日あたりのコイ1頭あたり(体長約160mm)の最大推定孵化貝数は6月で11.2頭であった。従って,水系において体長約160mmのコイを放した場合,貝の増殖率が10頭/コイ/日以下であれば,貝個体群の増殖は完全に抑制されるであろう。

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