以上の様に,大豆ねむり病菌の越冬,第1次伝染時の寄主体上における消長を観察したが,要約すれば凡そ次のようであつた.
1.播種時に温度,その他の環境条件がよければ,被害茎葉上の分生胞子数は直ちに増加する.発病種子上の胞子の場合は極めて少いが除々に増加する.
2.室内放置の新旧被害茎葉上の分生胞子は旧くなるにつれてその数は減少するが,3年前の寄主体上で認められた.
3.寄主体上での分生胞子,菌糸は野外においても越冬,越夏しうる.然し,その数は著しく減少し,発見数も極めて少い場合もあつた.又,病原性,発育を越冬後の胞子でみたが,夫々正の結果であつた.
4.従つて,寄主体上における病原菌は,分生胞子,厚膜胞子,菌糸等の形態で越年し,翌春,播種時に環境条件がそなわれば,速かに病菌は増殖し,新寄主体えの第1次伝染を起す伝染源となるようである.