抄録
1. 長崎県では1960年5月上~中旬に有明海・島原海湾沿岸地方一帯と県北・県西・五島の一部にコムギ黄さび病の発生を認めた.
2. 平均して約20%の胞子堆密度で,止葉に多く,第3葉以下には極めて少なかつた.品種は例年発病の少ない農林61号が多く,常発品種の外海には比較的少なかつた.オオムギ・ハダカムギには発病を認めなかつた。
3. 4月25日には熊本県玉名市で農林61号に黄さび病の大発生があつて,正葉の胞子堆密度が80%のもの40a,50%のもの60a,10%のもの80aに及んでおり,これが対岸の長崎県北東部に飛来したものと推察されたが玉名市における発生の第一次伝染源は不明である.
4. また4月16日に熊本県人吉市で観測じた黄沙は視程0.5km未満という強度のものであつたが,黄沙と黄さび病発生との関係については菌の生態型その他の基礎資料によつて解明していきたい.