2018 年 64 巻 2 号 p. 63-70
心理教育は広汎な患者に対し適用可能な方法であるが,心理療法においては認知行動療法等の問題解決技法を行う準備段階に位置付けられることが多く,心理教育そのものがもつ心理療法的効果についてはあまり報告されていない。本稿では,外来患者2名に行った短期心理教育面接の診療録を後方視的に振り返り,心理教育の心理療法としての意味づけを考察した。その結果,テキスト内容の伝達に留まらず患者固有の体験を踏まえた振り返りを行ったことが,理解の深化を促し新たな気づきが生まれるきっかけとなったことが窺えた。心理教育的介入の中にも,支持的介入を意図したものから表出的介入を意図したものまでのスペクトラムがあるのではないかと考えられる。