2023 年 68 巻 2 号 p. 47-52
難治化した三叉神経痛にベンラファキシンを使用し良好な経過を得た1例を経験した。症例は72歳女性,三叉神経痛に対して複数の薬剤による投薬治療や神経ブロック,神経血管減圧術が施行されるも疼痛は再燃を繰り返していた。ペインクリニックを経て当科を受診し,ベンラファキシンと認知行動療法を併用し疼痛は軽減した。慢性疼痛は身体的要因に加え心理社会的要因が絡むことでより難治化する傾向にあり,薬物療法と非薬物療法を効果的に組み合わせて治療を行う事が肝要であると考えた。本邦ではベンラファキシンは疼痛性疾患への保険適応を有していないが,その効果は徐々に明らかになってきており,慢性疼痛治療において有用である可能性が示唆された。