主催: 日本理学療法士協会 九州ブロック会
会議名: 九州理学療法士学術大会2019
回次: 1
開催地: 鹿児島
開催日: 2019/10/12 - 2019/10/13
p. 18
【目的】
職務満足の低下は,労働意欲を低下させるだけでなく,離転職の増加に関与することが示唆されている.また,リハビリテーション部署が大規模化し,スタッフ数が増加している現状から,円滑な組織運営や効率的な職務管理,人間関係構築のためにも組織内コミュニケーションが重要な要因であると考えられる.理学療法士(以下PT)の業務上のコミュニケーション課題に関する問題点を把握することで,職場への定着やサービスの質向上につながる効果的な環境づくりができるのではないかと考え,本研究の目的を組織内コミュニケーション満足度の,どの要素がPTの職務満足に影響しているかを明らかにすることとした.
【対象と方法】
対象は2018年6月の時点で病院勤務している臨床経験2年目以上のPTとした.調査方法は質問紙を用い,協力施設に対して用紙を送付し,共に添付した返信用封筒で回答を回収した.質問の構成は①基本属性(性別,年齢,経験年数,現職場での勤続年数,役職,配属病棟,リハビリスタッフ数),②コミュニケーション満足度:Communication Satisfaction Questionnaire(以下CSQ),「非常に満足している(7点)」から「非常に不満足である(1点)」の7段階リッカートスケールで得点化した.③職務満足調査:Minnesota Satisfaction Questionnaire(以下MSQ)の短縮版を使用し,同じく7段階リッカートスケールで得点化.統計学的分析は,統計解析ソフト「JSTAT for windows」を用い,有意水準は5%とした.
【結果】
質問紙は311名(回収率79. 3%)から回答を得た.このうち,不備のある回答を除いた300名(有効回収率76.5%,男性189名,女性111名,平均年齢31.8 ± 7.7歳)を解析対象とした.CSQとMSQには正の相関が認められた(r=0.73,p < 0.01).重回帰分析の結果,CSQ下位項目の内,組織的統合,上司とのコミュニケーション,水平的コミュニケーション,部下とのコミュニケーションがMSQに対する有意な独立変数として選択された(R2=0.63).CSQとMSQそれぞれにおける性別差には有意差は認められず,MSQにおいて役職があるPTは一般のPTより職務満足が有意に高かった.
【考察】
職場でのコミュニケーション満足度が高い程、職務満足が高い傾向があることが示された.したがって,職務満足を向上させる取り組みには,コミュニケーション満足度の向上をその手段とすることが可能であることが示唆された.また,職務満足を高める要因として組織や上司から与えられる情報が重要となる.上司は部下に対する日常の対人的なコミュニケーションだけでなく,従業員と組織の関係という大局的な視点では,組織の代弁者として部下に必要な情報を提供することが求められる.
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は計画立案に際し、研究協力施設の倫理審査委員会の承認を得て実施した(承認番号:18-Ifh-030).本調査を実施するにあたって,対象者には調査依頼書にて,研究の趣旨,研究方法,研究目的を文書で説明し,質問紙の返送をもって研究参加への同意とみなした.