主催: 日本理学療法士協会 九州ブロック会
会議名: 九州理学療法士学術大会2019
回次: 1
開催地: 鹿児島
開催日: 2019/10/12 - 2019/10/13
p. 46
【目的】
近年,新しい徒手治療として,Instrument assisted soft tissue mobilization(以下:IASTM)が注目されている.IASTMは金属器具を用いた治療手技であり,関節可動域の改善が複数報告されている.また,軟部組織柔軟性の改善も報告されている.一方,筋出力の改善は見解が一致していない.そこで本研究では,IASTMが筋出力に与える影響を調査することを目的とした.
【対象と方法】
対象は健常男性2名.アンケートにて身体情報の収集を行い,PURIMUS RS(BTE社製)を用いて最大等尺性膝関節伸展筋力(以下:MVIC)を3回測定し平均値を算出した.その後, IASTM治療(内側広筋:VM,大腿直筋:RF,外側広筋:VLに対し各3分介入)・ハーフスクワット10回を行い,再度3回測定の平均値を算出した.測定中の表面筋電図(以下:sEMG)をTELE myo DTS(NORAXON社製)にて算出し,MVICまでの筋の立ち上がり率(以下:RFD)をRFD100とした.sEMGよりスペクトル解析を用いて平均周波数(以下:MPF)を算出した.
【結果】
被験者A(年齢:27歳,身長:178.2cm,体重:61.4kg)のMVICは,介入前365.8Nmと介入後440.6Nmであった.RFD100は,介入前0.16Nm/秒と介入後0.20Nm/秒であった.被験者B(年齢:25歳,身長:170.0cm,体重:95.0kg)のMVICは,介入前587.7Nmと介入後682.9Nmであった.RFD100は,介入前0.28Nm/秒と介入後0.46Nm/秒であった.sEMGによるMPFは,被験者Aの介入前はVL84.0Hz,RF91.3Hz,VM76.2Hz,介入後はVM91.3Hz,RF86.6Hz,VM82.0Hzであった.被験者Bの介入前はVL118.2Hz,RF85.9Hz,VM96.8Hz,介入後はVM116.8Hz,RF85.8Hz,VM102.6Hzであった.
【考察】
筋出力の向上が確認され,肯定的な先行研究を支持する結果となった(Kim,2017).また,RFDにも向上が確認された.RFDは,ACL再建術後の一般的な復帰基準を満たしていても低値を示したと報告されており(Massumo,2012),RFDの向上は有益である可能性がある.しかし, MPFの変化が一定では無いためTypeⅡ繊維の活性化もしくは筋疲労の有無は不明であった.IASTMが筋機能を改善するメカニズムは不明確であるため,今後は対象者を増やし検討していく必要がある.
【まとめ】
IASTMはMVICとRFDを即時的に向上させる可能性がある.しかし,MPFに大きな変化は見られず,メカニズムを含めさらなる検討が必要と考える.
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は,人を対象とする医学系研究に関する倫理指針に基づき九州看護福祉大学倫理委員会の審査を受けて実施した(承認番号:30-020).また,研究の趣旨及び目的を十分に説明し,同意を得た.配慮として成人男性を被験者とし,測定中は張り紙をして外部から見えないようにした.なお,本研究において開示すべ利益相反関係にある企業等はない.