九州理学療法士学術大会誌
Online ISSN : 2434-3889
九州理学療法士学術大会2022
セッションID: O-09
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口述2
脳梗塞、脳出血加療中にcovid-19 感染し、ゾーニング対応となった症例に対するリハビリテーション介入の工夫と影響
丹生 竜太郎鐵見 竜司横山 しおり
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キーワード: covid-19, 脳卒中, ゾーニング
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抄録

【はじめに】

脳血管疾患に対するリハビリテーション(以下リハビリ)はより早期により多くの時間を関わることで回復を促すことができる。当院では脳梗塞、脳出血の患者に対し、急性期1 日平均3.28 単位の割合でリハビリを提供し、患者の社会復帰を目指している。

当院は第二種感染症指定医療機関でcovid-19 患者を受け入れており、感染対策には十分配慮して医療を提供しているが、2 月初旬に院内感染が確認された。感染は入院患者や医療スタッフに波及し、感染拡大を防ぐためにゾーニングによる感染対策が施行され急性期病棟1 病棟がcovid-19 専用病棟となり、各科の院内感染者がその病棟の病室内に隔離された。今回はその中で脳外科に入院しリハビリを実施していた患者でcovid-19 に感染した脳梗塞、脳出血のゾーニング後のリハビリの実施方法の工夫や単位数の変化、運動機能や重症度やADL の推移について報告する。

【方法】

調査方法は当院電子カルテから後方視的に介入単位、重症度(modified ranking scale:mRS)、日常生活活動(Barthel index:BI) などの情報収集を行った。対象は当院脳外科に入院後リハビリを実施した患者のうち、入院中にcovid-19 に感染した脳梗塞18 例(男性:8 例、女性:10 例平均年齢:83.7 ± 9.3 歳)、脳出血4 例(男性1 例、女性3 例平均年齢:81.2 ± 5.2歳)である。ゾーニングの期間は3 週間であった。リハビリ介入法はゾーニング前が患者担当制による通常リハビリを実施している。ゾーニング後は病棟専属で理学療法士を配置し、朝8 時30 分から夕方16 時まで病室内でリハビリを実施した。感染対策による介入場所と時間の狭小化から、患者のdisuse を生じるリスクが予測された事、また病棟看護師不足を補うためのタスクシフティングを目的に、病室内の運動療法に加えて以下の工夫を実施した。実施法の工夫としては、病棟看護師と連携を図り、車椅子⇄ベッドの移乗、食事介助、トイレ誘導及びトイレ介助などのPOC(point of care) などの介入を行った。感染対策としては標準予防策に加えてfull ppe(キャップ、フェイスシールド、サージカルマスク+N95 マスク、ガウン、2 重手袋)、病棟内への物品の持ち込み禁止、病棟内出入りの際は手指消毒のなどの徹底を図った。

【結果】

ゾーニング前後の介入単位は(前:3.28 単位後:2.78 単位)、mRS はゾーニング前後で4 例改善、2 例悪化、14 例変化なし。BI はゾーニング前後で6 例改善、2 例悪化、12 例変化なしであった。感染経路は不明であるが、ゾーニング期間中に病棟専属理学療法士1名covid-19 に罹患した。

【考察】

非常に感染力が高いcovid-19 罹患に罹患した脳梗塞及び脳出血患者へのゾーニング期に対するリハビリの取り組みを紹介した。介入場所と時間の狭小化から介入単位数は減少し、運動負荷量も減少してしまったが、病棟看護師との連携によりADL 面への介入を強化することができた。その結果、身体機能やADL 能力へどのような影響があったかは不明であるが、現時点での最良の介入法を模索する一助になるのではと考える。Covid-19 に対しては「with コロナ」といった観念を持ち、安全面を考慮しつつ、今後も患者への最良の医療を模索していく必要があると思われる。

【倫理的配慮、説明と同意】

本調査で得られた情報は、個人が特定できないように匿名化し、研究責任者が責任を持って厳重に管理している。

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© 2022 公益社団法人 日本理学療法士協会 九州ブロック会
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