九州理学療法士学術大会誌
Online ISSN : 2434-3889
九州理学療法士学術大会2022
セッションID: O-19
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口述4
地域在住高齢者における呼吸筋力に影響を与える要因
井元 淳神﨑 良子廣滋 恵一四元 孝道吉田 遊子中藤 佳絵烏山 昌起早川 智之橋元 隆
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抄録

【はじめに、目的】

本邦において老衰を除く死因の第4,第5 位は肺炎と誤嚥性肺炎であり,これら肺炎の発症予防は喫緊の課題である.気道を防御する重要な反射機構の一つに咳嗽反射があり,呼吸筋力の低下は防御機構の低下を招くと考えられる.よって呼吸筋力低下に影響を与える要因を検討することは重要な課題の一つであるが,身体組成や身体活動量などを含めた検討は乏しい.よって本研究では,地域在住高齢者における呼吸筋力に影響を与えている要因を検討することを目的とした.

【方法】

我々が2021 年度から実施している地域における健康づくり教室に参加され,本研究に同意が得られた女性高齢者12 名のうち呼吸器疾患の既往がある2 名を除く10 名(平均年齢76.0 ± 3.3 歳)を対象とした.自記式問診票にて対象者の基本情報とともに喫煙状況や身体活動量など生活習慣を聴取した.身体活動量は国際標準化身体活動質問票short version を用いて強度別身体活動量と1 日合計身体活動量を算出した.身体組成は体成分分析装置(InBody470)を用い,体格指数,除脂肪量,体脂肪率,骨格筋指数を測定した.呼吸機能検査では電子式診断用スパイロメータ(AS-507オートスパイロ)を用い,努力性肺活量,1秒量,1秒率,最大呼気流速を測定した.また呼吸筋力は呼吸筋力測定器(IOP-01)を用いて最大吸気口腔内圧(PImax)と最大呼気口腔内圧(PEmax)を測定した.統計学的分析は年齢,身長,体重を制御変数とした偏相関係数を用いて,呼吸筋力と生活習慣,身体組成,呼吸機能との関連について検討した.統計処理にはIBM SPSS Statistics 26.0 を用い,有意水準は5% とした.

【結果】

本研究の対象者において喫煙歴のあるものはいなかった.呼吸筋力のうちPImax は体格指数と有意な正の関係が見られ(P=0.004,相関係数=0.917),低強度身体活動量と正の関係の傾向が見られた(P=0.054,相関係数=0.745).その他の項目では有意な関係性は見られなかった.一方,PEmax は最大呼気流速と有意な正の関係が見られ(P=0.042,相関係数=0.771),低強度身体活動量と正の関係性の傾向が見られたものの(P=0.095,相関係数=0.677),それ以外の項目で有意な関係は認められなかった.

【考察、結論】

本研究の結果から,高齢女性においてPImax は体格の影響を受けることが示唆された.また有意差は見られなかったものの,身体活動量のうち低強度身体活動量が呼吸筋力と関連する可能性があることが推測された.誤嚥性肺炎予防のために低強度の身体活動量であっても実施の検討が必要であると考えられるが,今後,対象者を増やした検討を行っていきたい.

【倫理的配慮、説明と同意】

本研究はヘルシンキ宣言および人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針に沿って実施し、本研究に同意が得られたものを対象者とした。また所属大学の倫理委員会の承認を得て実施した(承認番号2108).

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© 2022 公益社団法人 日本理学療法士協会 九州ブロック会
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