九州理学療法士学術大会誌
Online ISSN : 2434-3889
九州理学療法士学術大会2022
セッションID: P-04
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ポスター1
肩関節周囲炎症例における罹病期間が肩関節機能に 与える影響
宮崎 大地小野 日菜乃谷口 晃輝佐藤 一樹河上 淳一釘宮 基泰
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抄録

【はじめに】

肩関節周囲炎は拘縮や痛みを主症状とし、3 つの病期を経て寛解に至り、病期に応じた理学療法が提供される。肩関節周囲炎の治癒期間は12 ヶ月から42 ヶ月と報告され、長期間の罹病期間となる。罹病期間と機能障害に着目した先行研究では、発症から3 年間の改善を認めるが、それ以降の治療で改善を認めないことが報告されている。しかしながら、罹病期間が長期間となった治療終了後に、機能障害と満足度を調査(能力障害を反映)した報告では、機能障害があるにも関わらず満足度が高い結果を示している。そこで、本研究の仮説は罹病期間と機能障害や能力障害に関連性がないとした。また、本研究の目的は、肩関節周囲炎の罹病期間と機能障害や能力障害の関連性の結果を、今後の肩関節周囲炎患者への患者教育に活かすこととした。

【対象と方法】

2022 年3 月から2022 年4 月に当院で肩関節周囲炎と診断され、理学療法が処方された全患者とした。除外基準は脳卒中などの既往がある者、腱板断裂症状がある者(徒手筋力検査にて肩外転5未満、肩外旋5未満、インピンジメント症状陽性の3つが揃っている者)、同意が得られなかった者とした。

検査項目は、罹病期間、機能障害として肩関節自動屈曲可動域、指椎間距離、安静時、運動時、最大時のVisual Analog Scale (VAS)、Tampa scale for kinesiophobia(TSK)、運動恐怖VAS、Pain Catastrophizing Scale(PCS)、能力障害としてShoulder36 V.1.3(Sh36)とした。統計は、JMP ver.15(SAS Institute, Cary, NC, USA)を使用し、Pearson の積率相関係数を用いて罹病期間に対する機能障害と能力障害の相関係数を検討し、有意水準を5%と定めた。

【結果】

本研究の対象者は33 名であり、男性11 名、女性22 名、平均年齢58.5歳± 69.1、罹病期間604 日± 591 であった。罹病期間と相関を認めた項目は指椎間距離と負の相関(r=-0.44、p =0.008)、PCS 無力感と正の相関(r=0.37、p =0.03)を認めた。

【考察】

本研究の結果、肩関節周囲炎症例における罹病期間は機能障害の指椎間距離と負の相関を認めた。指椎間距離の結果は先行研究と類似した結果となった。能力障害の指標であるSh 36 は罹病期間と相関を認めなかった。能力障害と罹病期間には相関があると報告されているが、本研究では異なる興味深い結果を示した。日常生活動作では様々な肢位や環境下で自動可動域や筋力を適切に操作する能力が必要とされる。そのため、患者の問題点に応じた評価治療が必要になるのではないかと考える。今後は、本研究結果を肩関節周囲炎患者への患者教育に活かし、肩関節周囲炎症例における能力障害に影響する因子を検討していきたい。

【倫理的配慮、説明と同意】

本研究はヘルシンキ宣言に基づき、患者情報の保護には十分留意し、患者に本研究の主旨を書面で説明し同意を得た。また本研究の参加は自由意志によるものとし、同意を得た後でもその撤回が可能であり、たとえ同意しなくても不利益を被ることがない旨を説明した。

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© 2022 公益社団法人 日本理学療法士協会 九州ブロック会
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