主催: 日本理学療法士協会 九州ブロック会
会議名: 九州理学療法士学術大会2022 in 福岡
回次: 1
開催地: 福岡
開催日: 2022/11/26 - 2022/11/27
【はじめに、目的】
ストレッチングの中でもスタティックストレッチング(SS)はスポーツやリハビリテーション現場で用いられる手技の一つである.このSS 介入は関節可動域を増加し筋硬度の減少効果がある反面,最大筋力発揮やパフォーマンスの低下を引き起こすことが指摘されている.また,単位時間当たりの爆発的な筋発揮能力の指標であるRata of force development (RFD) や一定の筋力を安定してコントロールする指標であるForce steadiness という筋発揮能力を表す指標がある.我々が知る限り,SS 介入がRFD やforce steadiness に及ぼす影響については十分,明らかにされていない.加えて,スポーツやリハビリテーション現場におけるSS 介入を想定すると,どの程度,持続効果があるのかを検討することは重要な情報となることが期待される.そのため,本研究の目的は,膝関節伸展筋群を対象に60 秒× 3 回(合計180 秒間)のSS 介入がRFD およびForce steadiness に与える経時的変化を検討することである.
【方法】
対象は健常若年男性20 名(平均年齢20.5 ± 0.9 歳)とし,利き足側の膝伸展筋群とした.被験者は4 回実験室を訪問し,初回は測定項目の練習を行い,残り三回は①SS 介入直後,②10 分後,③20 分後条件を無作為な順番で実施をした.測定項目は最大等尺性膝関節伸展筋力(MVIC),RFD,およびMVIC の5% と20% のトルクに対するforce steadiness とした.なお,これらの測定を行った後,膝伸展筋群を対象に60 秒× 3 回(合計
180 秒間)のSS 介入前後に測定を行った.
MVIC は多用途筋機能評価訓練装置(BIODEX system 3.0:BIODEX 社)を使用して膝関節屈曲90°で測定した.RFD を算出するために,出来るだけ早く,出来るだけ強く筋力発揮を行うように指示をした.なお,RFD は筋力発揮のonset より200ms までの変化率(Nm/mm)を解析に用いた.加えて,Force steadiness はMVIC の5% および20% をそれぞれの目標筋力として設定し,10 秒間で目標筋力に合わせ,その後,15 秒間筋力を維持させる課題を実施した.この15 秒間を解析区間として,変動係数(標準偏差/平均値)を算出した.なお,変動係数は大きくなるほど,筋力発揮調整能力が低下することを意味する.統計処理として,反復測定二元配置分散分析(時期vs 条件)を用いた.なお,有意水準は5%未満とした.
【結果】
本研究の結果,全ての項目において有意な交互作用は認められなかったが,時期に主効果を認め,SS 介入によりMVIC およびRFD は有意に減少し,Force steadiness は5%と20% ともに有意に増加した.
【考察】
本研究の結果,膝伸展筋群を対象に60 秒× 3 回(合計180 秒間)のSS 介入は最大筋力発揮能力を低下させるだけではなく,爆発的な筋力発揮能力や筋発揮コントロール機能を低下させることが明らかとなり,その効果は20 分後まで持続することが明らかとなった.そのため,スポーツやリハビリテーション現場でSS 介入を行う際には持続効果を加味したプログラム構築が必要であることが示唆された.
【結論】
60 秒× 3 回(合計180 秒間)のSS 介入による爆発的筋発揮能力や筋発揮コントロール能力低下は20 分後まで持続する.
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は本学の倫理審査委員会の承認を受けて実施された.また,本研究はヘルシンキ宣言に則っており,実験開始前に対象者に本研究内容を口頭と書面にて十分に説明し,同意を得た上で行われた.