九州理学療法士学術大会誌
Online ISSN : 2434-3889
九州理学療法士学術大会2022
セッションID: P-23
会議情報

ポスター4
入院時にフレイルを呈している高齢患者のリハビリテーション処方に関する検討
西村 陽央山口 晃樹小無田 徳仁川口 禎仁木場 亮太徳永 誠次諸岡 俊文
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【目的】

フレイルを呈している高齢者では短期間の入院加療においても身体的,精神心理的フレイルが増悪する可能性が非常に高いとされており,能力障害の改善や自立性の再獲得を目的とした急性期リハビリテーションは重要と言われている.しかしながらフレイル高齢者への適切な対応が求められる急性期病院にあっても,そのすべてにおいてリハビリテーション処方がなされているとは言えない現状がある.またフレイル有病率やその運動効果に関する報告は多いが,フレイル高齢者へのリハビリテーション処方率やその要否に関した報告はほとんど散見されない.よって本研究では入院時点でフレイルを呈していた高齢者において,そのリハビリテーション処方の必要性および要否を分けた要因,特徴を検証することとした.

【方法】

対象は2021 年5 月17 日から同年8 月31 日までの期間に在宅から当院へ予定入院となり,かつ本調査研究への同意が得られた65 歳以上の高齢者155 名のうち,フレイル判定として入院当日に実施した基本チェックリストにて8 項目以上に該当があった者50 名(平均年齢75.9 ± 4.9 歳)とした.評価項目は基本属性および入院経過(年齢,性別, 診療科,家族構成,入院目的,在院日数,転帰等)に加え,入院時の運動機能として握力,大腿四頭筋筋力,椅子起立時間,Timed up & Go Test(以下,TUG),開眼片脚立位時間,10 m歩行時間の6 項目を測定した.さらに認知機能評価としてMini-Cog,精神機能評価としてGeriatric Depression Scale-15 を測定した.対象のうち入院期間内にリハビリテーション処方がなされた群(以下,リハ処方群)とそうでなかった群(以下,非リハ処方群)において各評価項目についてMann-Whitney U 検定またはカイ二乗検定を用いた群間比較を行った.統計解析にはIBM SPSS Statistics(version 19) を使用した.

【結果】

入院時にフレイル高齢者と判定された50 名のうちリハ処方群は18 名で全体の36%,非リハ処方群は64% であった.

リハ処方群と非リハ処方群の群間比較を行った結果,リハ処方群では在院日数の項目において有意に高値(p =0.02)を示した.また入院時の運動機能評価においてはTUG の項目でリハ処方群が有意に高値(p =0.03)を示し,10 m歩行時間についてもリハ処方群で有意に高値(p =0.02)を示した.また最終転帰については対象者全例において自宅退院困難例などの不良転帰を辿ったケースは認めなかった.

【考察】

当院の調査においては入院時点でフレイルを有していた高齢者に対するリハビリテーション処方率はわずか36% に留まりフレイル高齢者への対応が十分に行えているとは言い難い結果であった.しかしながら対象者全例において自宅退院困難例などの不良転帰に至ったケースは認められず,在宅復帰というアウトカムに限れば入院時点でフレイルを有していることが必ずしもリハビリテーション処方を必要とする理由にはならないという可能性も示唆された.一方でリハ処方群においては在院日数とTUG,10 m歩行時間が有意に高値であったことを踏まえると,入院時点や加療経過によって在院期間が長期化することが見込まれる症例や,フレイル状態に加えて歩行機能の低下を有している高齢者については入院中のリハビリテーション処方を積極的に検討していただく必要性があるのかもしれない.

【倫理的配慮,説明と同意】

本研究はヘルシンキ宣言の趣旨に沿って実施し,所属機関の倫理委員会の承認を得た上で実施した(承認番号:17)

著者関連情報
© 2022 公益社団法人 日本理学療法士協会 九州ブロック会
前の記事 次の記事
feedback
Top