九州理学療法士学術大会誌
Online ISSN : 2434-3889
九州理学療法士学術大会2023
会議情報

一般演題22[ 調査・統計]
心不全患者における足底板の有効性の検討 ~6MWD を用いて~
O-125 調査・統計
溝内 一也杉田 憲彦阿南 裕樹大平 高正古瀬 範之
著者情報
キーワード: 心不全, 足底板, 運動耐容能
会議録・要旨集 フリー

p. 125-

詳細
抄録

【はじめに】 心不全患者は運動耐容能の低下によりADLの制限を生じており、運動耐容能の改善には運動療法等が必要不可欠であるが、長期間の運動療法を要する場合もある。足底板療法(以下、足底板)は変形性膝関節症のガイドライン等での有効性が示されているが、心不全患者への有効性は示されていない。しかし、我々は足底板を挿入することで、歩行時の運動耐容能やADLを改善させた心不全症例を報告した。そこで本研究では、足底板が心不全患者に対して、歩行における運動耐容能を即時的に改善する手段として有効であるか検討した。

【方法】 対象は2020年1月~2021年12月に心不全で入院し、維持・回復期に心臓リハビリテーションを実施した6分間歩行距離(以下、6MWD)を測定可能な16名(NYHAⅠ-Ⅱ、年齢:78±11.7歳、性別:男性8名、女性8名)とした。靴の不所持、認知症(改訂長谷川式簡易知能評価スケール≦20)、歩行時に疼痛を有する者は除外した。運動耐容能の評価には6MWD、足底板は作成が容易で汎用性の高いパッド貼付型足底板を採用した。6分間歩行試験(以下、6MWT)は、反復により歩行距離が向上する学習効果が報告されていることを考慮して、初回の足底板非挿入(以下、初回)、足底板挿入(以下、挿入時)、最終の足底板非挿入(以下、最終)の順に計3回測定し、試験間は3日以内として比較、検討した。統計学的解析はEZR(ver2.5-1)を使用し、反復測定分散分析と事後検定として多重比較検定(Bonferoni法)にて比較した。有意水準は5%とした。

【結果】 6MWDは初回:254.9±114m、挿入時:290±106.1m、最終:262.8±111.7mであった。挿入時は初回、最終の非挿入時と比較し、それぞれ有意差を認めた(p<0.05)。非挿入時(初回、最終)間では初回と比較し、最終の方が向上傾向であったが、有意差を認めなかった。

【考察】 足底板挿入時と初回、最終の非挿入時それぞれに有意差を認めたことから、足底板が即時的に心不全患者の6MWDを向上させることが示された。心不全患者は運動耐容能の低下により、息切れや疲労感が出現し6MWDが低下する。しかし、足底板を挿入することで、足部を中心とした下肢機能の改善に伴い、歩行時の重心移動を円滑化させ、歩行効率を改善させたことが6MWDの向上につながったと考える。

【まとめ】 足底板は心不全患者の6MWDを改善させたことで、歩行における運動耐容能を即時的に向上させる為の有効な介入手段になる可能性が示唆された。今後は6MWTにおける心拍数やRPE等の変化にも着目し、心不全患者に対する足底板の効果について検討していきたい。

【倫理的配慮、説明と同意】 本研究は当院倫理委員会にて承認を得て(第2007号)、ヘルシンキ宣言に基づき調査研究を行った。また研究の実施に際し、対象者に研究についての十分な説明を行い、同意を得た。

著者関連情報
© 2023 公益社団法人 日本理学療法士協会 九州ブロック会
前の記事 次の記事
feedback
Top