九州理学療法士学術大会誌
Online ISSN : 2434-3889
九州理学療法士学術大会2023
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一般演題13[ 測定・評価① ]
当院外来透析患者の透析導入から約5年後の骨格筋量の経時的変化について
O-073 測定・評価①
甲斐 有城田原 佑晟米夛 めぐみ冨脇 梨奈髙野 直哉松村 元貴中神 正巳
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キーワード: 透析, 骨格筋量, 自主訓練
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p. 73-

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抄録

【目的】 日本人の363人に1人は透析患者と言われており70代に限れば100人に1人は透析を受けている。また、熊本県は、全国でも透析患者数が多く2010年以降、全国1、2位で推移している。令和4年度診療報酬改定に伴い、透析中の運動指導に係る評価が新設され、当院でも令和4年12月から外来・入院透析患者への透析中の運動療法を実施している。今回、透析中の運動療法を受けていない外来透析患者の透析導入から約5年後の骨格筋量の変化に着目し若干の知見を得た為ここに報告する。

【方法】 対象は、2015年1月から2023年3月までの期間で外来透析導入(初期)から約5年間(最終)で定期フォローとしてCT検査が実施でき、歩行自立している慢性腎臓病(CKD)患者17名(男性9名、女性8名 平均68.94±10.47歳)とした。なお、透析中の運動療法を実施しているものは除外とした。評価項目は、BMI、Psoas Muscle mass Index(以下、PMI)、Geriatric Nutritional Risk Index(以下、GNRI)、アルブミン(以下、Alb)クレアチニン(以下、Cr)、Kt/v、CRPとし、初回と最終を比較検討した。PMIは、第3腰椎レベルにおける大腰筋面積の合計を身長の2乗で除した値とした。大腰筋面積はフリーハンドで2回トレースし平均値を算出した。PMIのcutoff値は、男性6.36 ㎝2/m2、女性3.92 ㎝2/m2を使用した。統計解析は、Statcel4を使用し、ウィルコクソン符号付順位和検定、関連のある2群の検定を用い、級内相関係数(intraclass correlation;ICC)も算出した。

【結果】 初回と最終のPMIのICC(1, 1)は0.99であった。PMI(初期4.32±1.18 ㎝2/m2、最終3.99±1.12 ㎝2/m2、p=0.01 p<0.05)で有意差が認められた。BMI(初期23.48±3.38 ㎏/m2、最終24.05±2.70 ㎏/m2、p=0.29)、GNRI(初期97.36±7.36、最終100.26±6.56、p=0.98)、Alb(初期3.60±0.22、最終3.72±0.21、p=0.99)、Cr(初期3.76±1.20、最終3.74±0.85、p=0.79)、Kt/v(初期1.38±0.26、最終1.55±0.27、p=0.99)、CRP(初期0.44±0.84、最終0.39±0.52、p=0.70)とそれぞれ有意差は認められなかった。

【考察】 外来透析導入から約5年後の骨格筋量は17人中14人でPMIが有意に減少しており骨格筋量の低下が認められた。今回、栄養状態や炎症値に有意差が認められなかったことから加齢以外では透析時の臥床時間などの身体不活動やインスリン抵抗性、多疾患併存、入院イベントなどが影響していたと考えた。また、男性は9人中8人、女性は8人中6人が初期からすでにPMIのcutoff値を下回っておりサルコペニアの状態であった。導入期腎不全患者は健常者と比べて尿毒症に加え、食事制限や低栄養、身体機能低下など様々な因子が影響していたと考えた。

 今回の研究で透析中の運動療法だけでなく自主訓練の方法や定着など考慮し身体機能維持・改善に努めていきたい。また、CKD保存期あるいはその前の段階から介入することでサルコペニアの予防を図ることが大切である。

【結論】 当院外来透析患者の透析導入から約5年間で骨格筋量は低下していた。また、男性の88%、女性の75%が透析導入時からすでにサルコペニアの状態であったためCKD保存期あるいはその前の段階から自主訓練の方法や定着を考慮しないといけないと考えられる。

【倫理的配慮、説明と同意】 本研究は、ヘルシンキ宣言に基づき、対象者に本研究の主旨、目的を十分に説明し、同意を得て実施した。

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