九州理学療法士学術大会誌
Online ISSN : 2434-3889
九州理学療法士学術大会2023
会議情報

一般演題14[ 測定・評価② ]
Figure-of-8 Walk Test とBrief-BESTest を構成する 各項目との関連性
O-078 測定・評価②
富永 章寛光武 翼坂本 麻衣子
著者情報
会議録・要旨集 フリー

p. 78-

詳細
抄録

【目的】 毎年、高齢者の約3人に1人が転倒しており、頭部外傷など深刻な結果をもたらしている。そのため、転倒予防を目的とした、歩行評価や姿勢制御機能の評価を行うことが重要であるが、現在用いられている歩行評価は、一方向からの方向転換や、直線路のものが多い。Figure-of-8 Walk Test(F8W)は、一度に直線路と左右両回りの歩行能力の評価が行え、様々な歩行を必要とする日常生活動作に沿った歩行評価である。F8Wは、先行研究から転倒リスクや転倒率に影響すると報告しているが、姿勢制御機能との検証はなされていない。姿勢制御機能の評価は、先行研究よりバランス機能評価尺度であるBalance Evaluation Systems Test(BESTest)により評価が行えると報告している。BESTestは、評価時間の問題から評価項目が短縮した、Brief-BESTestが開発されている。Brief-BESTestは、8つの評価項目があり、この8つの観点からバランス機能を評価している。本研究の目的は、F8Wと姿勢制御機能との関係性を検証し、歩行評価であるF8Wが姿勢制御機能を含めた評価が可能なのか検証することとした。

【方法】 対象者は、入院患者43名(男性:11名、女性:32名、平均年齢:71.6±14.3、脳血管障害疾患:10名、整形外科疾患:33名)とした。評価項目は、F8Wの所要時間とBrief-BESTest, Mini-Mental State Examination(MMSE)とした。Brief-BESTestは、6つの制御機能(Ⅰ:生体力学制約、Ⅱ:安定限界、Ⅲ:予測的姿勢制御、Ⅳ:反応的姿勢制御、Ⅴ:感覚機能、Ⅵ:歩行安定性)で構成されている。この6つの制御機能を8つの評価項目(B-1からB-8)で評価を行い、それぞれ0から3点で採点する。合計は0から24点であり、点数が高いほどバランス機能が高いことを意味している。除外基準は、MMSE23点未満の者とした。始めに、F8WとBrief-BESTestの各項目との関係を知るために相関係数を算出した。次に、F8WがBrief-BESTestの各項目に、及ぼす影響の程度を検証するため重回帰分析を行った。統計処理は、JMP Pro 17.0.0を用い、有意水準を5%とした。

【倫理的配慮、説明と同意】 本研究は、対象者の個人情報保護に十分留意し、研究への参加についての文書と口頭による説明を行い、同意書を得た後開始した。また本研究は、佐賀大学倫理委員会の承諾を得ている(承認番号:R4-12)。

【結果】 F8WとBrief-BESTestの各項目に対し、Pearsonの相関係数を算出した。その結果、生体力学的制約(B-1:r=0.44)、安定限界(B-2:r=0.43)、予測的姿勢制御(B-3:r=0.38, B-4:r=0.53)、反応的姿勢制御(B-5:r=0.41, B-6:r=0.48)、感覚機能(B-7:r=0.12)、歩行安定性(B-8:r=0.60)であった。次に、従属変数をF8Wとし、独立変数をBrief-BESTestの各項目とした重回帰分析を行った所、標準化係数から影響のある項目は、B-7=0.35, B-8=-0.53であった(R2=0.53、全項目VIF=10以下)。

【考察】 本研究より、中等度の相関関係が認められた項目から判断すると、F8Wは生体力学制約、安定限界、予測的姿勢制御、反応的姿勢制御、歩行安定性と関与することが示された。また、標準化係数から判断すると感覚機能と歩行安定性に影響があることが示された。そのため、F8Wは歩行評価だけでなく、姿勢制御機能を含めた評価が行える歩行評価法であることが示唆された。

著者関連情報
© 2023 公益社団法人 日本理学療法士協会 九州ブロック会
前の記事 次の記事
feedback
Top