主催: 日本理学療法士協会 九州ブロック会
会議名: 九州理学療法士学術大会2024 in 佐賀
回次: 1
開催地: 佐賀
開催日: 2024/11/09 - 2024/11/10
【はじめに】 当院における新規就労支援の際、支援期間が長期に及ぶ、スタッフにより支援状況に差がある、就労準備性が整っていないなどの課題が山積していた。 そこで、2022年より就労支援チームを結成し、支援プロセスをマニュアル化したため考察を加え報告する。 【チーム・プロセス紹介】 ・就労支援チーム:医師、社会福祉士、看護師、医療事務、セラピスト ・プロセス:①新規就労希望聴取②情報共有シートにて情報収集 (職歴、希望月収、家族の意向、ストレス要因とその対策等)③主治医、セラピスト、就労支援チームにて情報共有④障がい者基幹相談支援センター (以下基幹センター)へ情報共有シート、サマリーを伝達し相談⑤面談 (本人・家族・基幹センター職員・当院職員・必要に応じ就労支援事業所 (障害者就業・生活支援センター (以下なかぽつ)、就労移行支援事業所、就労継続支援事業所)⑥就労支援事業所利用⑦病院・事業所間で就労・訓練状況を共有⑧外来診察・リハビリ (状況確認、職場訪問、リハビリ実施)を継続または終了 【方法】 支援プロセス導入前 (2019~2021年)・導入後 (2022~2023年12月)の年度ごとに新規就労数、年齢、高次脳機能障害の有無、家族関係、支援開始~面談までの期間、支援開始~就労までの期間を調査した。2群間の比較にはアンダーソン・ダーリング検定、等分散を仮定した2標本によるT検定を用いた。有意水準は5%とした。 【結果】 新規就労数は導入前4名、導入後4名、平均年齢はそれぞれ55.5±7.85歳と56.5±8.10歳、面談までの平均期間は62.5±43.5日と30±23.2日、就労までの平均期間は723.25±119.67日と151.5±77.7日であった。本プロセス導入後は就労までの期間が有意に短縮していた (P<0.001,Cohen’s dの効果量6.54)。 【考察】 本来就労に関する相談はなかぽつに相談するのが一般的であり、問題発生時に基幹センターへ相談することが多い。しかし、基幹センター職員が初めに面談することで就労準備性を早期に確認し、最適な就労支援施設を選定することで就労移行期間も短縮出来ると考え、本プロセスでは初回に基幹センターとの面談を依頼している。 また、外来リハビリを継続しながら就労支援事業所と情報共有を図ることで、就労またはその定着に向けた機能訓練・環境調整が円滑になると考えられる。 これらのことにより、今回当院の新規就労支援における期間短縮を図れたのではないかと考える。 さらに、支援プロセスのマニュアル化・就労支援チームのサポートにより経験の浅いスタッフでも同質の支援を行うことが可能となると考える。 新規就労支援における課題として、現状では全ての支援においてサービスで行っているため収益性をあげられていないこと、また、障害者手帳の取得に至らない程度の障害では従来のハローワーク等の紹介にとどまることなどが挙げられる。今後は、以上の点を踏まえ新規就労支援の改善を図っていきたい。 【倫理的配慮】本研究では、職業、病歴、家族構成、所得などの基本属性の回答を含む質問紙調査とデータ分析において個人情報を扱うため、質問紙調査においては、個人情報が研究計画に反して外部に漏洩しないように、調査によって得られた情報の一部(氏名等)を削除し、必要なデータのみ数値化し保存するなど、第三者に対象となった個人を特定できない形で推計する。以上の配慮のもと、頴田病院倫理委員会規定に従って研究を行った。