主催: 日本理学療法士協会 九州ブロック会
会議名: 九州理学療法士学術大会2024 in 佐賀
回次: 1
開催地: 佐賀
開催日: 2024/11/09 - 2024/11/10
【目的】骨格筋指数 (skeletal muscle mass index:SMI)は,骨格筋量の評価値として用いられる。骨格筋量の維持には,食事から蛋白質やエネルギーなどの栄養素を摂取することが必要不可欠である。現代社会では,朝食を抜く人が増加しており,糖尿病や肥満の発生リスクを高めることも明らかにされている。また,朝食を抜くと1日の蛋白質とエネルギー摂取量が減少することが明らかとなっている。したがって,我々は朝食の摂取が骨格筋量に関係するという仮説を立てた。そこで本研究の目的は,朝食摂取の有無とSMIの関係性を検討することとした。本研究結果は,地域在住健康成人の骨格筋量減少の予防や維持に貢献すると考える。 【方法】対象は地域で実施した体力測定会への参加者とした。除外基準は,痛みや麻痺を有する者,データに欠損がある者とした。基本情報として性別と年齢を聴取し,身長,体重,body mass index,SMIを測定した。身体機能は,最大歩行速度,握力,5回椅子立ち座りテスト,timed up and go test,閉眼片脚立ち時間を測定した。また,朝食摂取と運動習慣の有無を調査し,mini-mental state examinationを評価した。統計処理は,分析対象者を朝食摂取群と朝食非摂取群の2群に分けて各測定項目を比較した。次にSMIと朝食摂取の有無の関係性を一般化線形モデルで検討した。なお,統計学的有意水準は5%とした。 【結果】分析対象者は,体力測定会への参加者51名 (57±15歳,女性55%)であった。なお,除外基準に該当する者はいなかった。朝食摂取の有無別に各測定項目を比較した結果,朝食摂取群は朝食非摂取群と比較して,SMIが有意に高値を示した (p=0.020,ES=0.83)。一般化線形モデルの結果,SMIには朝食摂取の有無 (参照:有)が関係することが明らかになった (標準化係数β:-0.34,p=0.020)。共変量で交絡を調整したモデルの結果もSMIには朝食摂取の有無が関係することが明らかになった (標準化係数β:-0.25,p=0.049)。 【考察】本研究は,朝食摂取の有無とSMIの関係性を検討した。その結果,SMIには朝食摂取の有無が有意に関係することが明らかになった。朝食を摂取することで,1日の蛋白質やエネルギー摂取量が増加する。これによって,筋量の維持や増加に必要な栄養素が枯渇しない生体内環境が整うと推察する。また,朝食を摂取することでエネルギーが補給されることにより日中の活動が活発になるとの報告がある。このように朝食の摂取は,様々な側面から骨格筋量と密接に関係する。一方で,朝食を摂取しないことで,昼食や夕食後の血糖値が上昇しやすく,血糖コントロールが悪化する。血糖値不良により高血糖状態に陥ると,蛋白質が分解され骨格筋量が減少する。本研究では血糖値の測定を行っていない為,推測の域に過ぎないが,健康な成人であっても生体内で血糖値の上昇が起こり,SMIに何らかの影響を与えた可能性がある。 【結論】本研究の結果,SMIには朝食摂取の有無が関係することが明らかになった。朝食を摂取することは地域在住健康成人者の骨格筋量の維持や増加に寄与する可能性が示唆された。 【倫理的配慮】対象者には,研究の内容を十分に説明し,同意を得て測定を実施した。本研究への参加は任意とし,同意が得られない場合でも不利益にならないことを説明した。本研究は,西九州大学倫理審査委員会の承認を得てから実施した。