九州理学療法士学術大会誌
Online ISSN : 2434-3889
九州理学療法士学術大会2024
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セッションポスター1 教育・管理運営
カラーマスクで勤務形態を見える化した業務改善
早川 亜津子山口 純平髙尾 尊身
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p. 301-

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抄録

【活動目的】 近年、「仕事は暮らしを支え生きがいや喜びをもたらすと同時に家事・育児等の生活も暮らしには欠かすことはできないものであり、その充実があってこそ人生の生きがい、喜びは倍増する」と厚生労働省の仕事と生活の調和 (ワークライフバランス)の憲章で謳われてきた。理学療法士として患者と接しやりがいを感じ、理学療法士が生きがいとなっている療法士を多く見受ける。しかし、ワークライフバランスの破綻から身体の不調を来す療法士も少なからず存在するのが現状である。 当院回復期リハビリテーション病棟 (以下、回リハ病棟)に従事する療法士には、3つの勤務形態 (早番・遅番・通常勤務)がある。特に早番勤務での療法士には早番勤務実施後のサービス残業や業務終了間際の業務支援、遅番勤務の療法士は休憩時間確保が喫緊の課題であった。そこで、まずは3つの勤務形態を当事者や他スタッフが再認識する必要があると考え、他院看護部が導入していた「勤務形態ごとにカラーマスクでわける」方法を当院回リハ病棟で2か月間試験的に取り入れた。カラーマスクを装着している当事者は心理的にポジティブラベリング効果、その他のスタッフは間接プライミング効果を利用することでどのような効果があり業務改善が行えたのか効果判定を行うことを目的とした。 【活動内容】 当院リハビリテーション室に在籍する全療法士 (41名、そのうち回リハ病棟従事者29名)を対象にカラーマスク試用期間前 (令和5年9月1日~10月31日)とカラーマスク試用期間 (令和5年11月1日~12月31日)での①早番、遅番、通常勤務ごとの平均退社時間、②カラーマスク導入費用、③早番、遅番、通常勤務ごとの平均取得単位数と件数の比較を行った。また、カラーマスクを試用したことによる変化や感じた点について無記名アンケートを実施した。 【活動経過】 結果として①平均退社時間は44~52分早くなり、②導入費用は通常マスクとカラーマスクの金額差 (477円/箱)はなかった。③平均取得単位数/件数は16.4/8.0→15.1/8.1となった。単位数としては1.3単位 (約20分)の減少がみられるものの退社時間は20分以上早くなった。 アンケート結果では、全スタッフの92%がカラーマスク試験導入を把握し、カラーマスクを導入することで73%のスタッフが他スタッフの勤務時間を配慮し、63%のスタッフが定時退社がしやすくなったと回答した。70%のスタッフがカラーマスクを本格導入することにより勤務しやすい職場になると回答した。しかし、遅番勤務の休憩時間の確保については半数以上のスタッフが確保できていないことが解った。 【考察】 今回、カラーマスクを試験導入した結果、カラーマスク装着している当事者は自身へのポジティブラベリング効果により定時退社がしやすくなり、周りのスタッフは一目で勤務形態が解る間接プライミング効果により、勤務時間終了間際の業務依頼をすることが減少する配慮ができた。定時退社がしやすい組織風土はワークライフバランスの構築には欠かせないものである。カラーマスクは導入費用がかからず、管理者にとってはすぐに実践できる「働き方改革のひとつ」である。しかし、本院での課題は遅番勤務での休憩時間の確保である。こちらについては重要課題として、問題点の抽出を行い改善していく。更に本格導入の際には、回リハ病棟全職員ひいては本院全体への周知徹底が必須である。 【倫理的配慮】倫理審査番号:第R5-17.令和6年3月26日

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© 公益社団法人 日本理学療法士協会 九州ブロック会
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