抄録
統合失調症者では脳の活性水準が上昇し適切な抑制機構が働かず閉塞現象が起こりやすい。すなわち背景活動が高すぎて選択的な判別ができない状態になりやすく、情報処理が困難となる。そこには眼球運動が不円滑になることや注視点の移動が狭い範囲に限局される傾向があることなど、注意障害や認知機能の障害が示唆される。今回、我々はA4版の用紙の中に書かれた様々な図形の中から、1種類の図形を抽出してゆく注視探索形式のテストを実施し、健常群との抽出率の比較を行った。同時に注視探索範囲の検証、症例群における入院率の差による検証、作業療法評価としては日本作業療法士協会版精神障害者ケアアセスメント(第2版)を用いた比較検討も試みた。結果としては統合失調症者において脱漏や誤りが健常者に比べ多く、選択的な判断ができにくい傾向にあり注意の持続が難しく情報の処理が拙劣となりやすいことが考えられた。入退院を繰り返しやすい症例は背景活動が高くなるにつれ選択的判別に低下傾向を認め、生活の管理能力も有意に低下していることより、注意や認知機能の障害が重篤になるにつれ、日常生活の管理や社会生活に支障をきたすことになり得ることが考えられた。