抄録
介護業務と腰痛に関する先行研究では、移乗介助との関連性を示した報告が多く、その他の介護業務との関連や実施頻度との関連性については明らかにされていない事が多い。そこで本研究の目的は、一般病院に勤務する看護及び介護職員193名(男性33名、女性160名、平均34.3歳±12.8)を対象に、様々な介護業務の実施頻度と腰痛との関連性を検証することである。対象者の腰痛有訴状況は、腰痛有りが116名(60.1%)であり、腰痛の有無別の対象者の基本属性に有意差は認められなかった。予備調査によって得られた腰部に負担がかかりやすい15項目の介護業務で、実施頻度が高かったのは、「オムツ交換」「体位変換」「移乗の介助」であった。腰痛の有無別の実施頻度の比較では、実施頻度で上位に位置づけられた項目には有意差が認められ、下位にランクされた項目にも有意差を示す傾向が認められた。いずれも腰痛有り群が無し群より、介護業務を頻繁に行っていた。これらのことから、本研究における対象者の腰痛は、介護業務全般と関連性が認められた。即ち、特定の介護業務だけが腰痛を発生させるのではなく、様々な介護業務を頻回に実施することにより、腰痛が引き起こされていると推察された。