抄録
本研究では,関節不動化および他動運動がラット距腿関節軟骨に与える影響を組織学的に検討した.8週齢のWistar系雄ラット20匹を1)対照群(CON群,n=5),2)足関節をギプス固定する固定群(I群,n=5),3)足関節をギプス固定し,その過程で持続的ストレッチングを行う群(PS群,n=5),4)足関節をギプス固定し,その過程でCPMを行う群(CPM群,n=5)に分けた.4週間の実験期間終了後,脛骨下端1/4の部位から前足部中央までを摘出し,パラフィン包埋の後に矢状断連続切片を作成し,ヘマトキシリン&エオジン染色を施した後に検鏡した. I群,PS群では,CON群,CPM群と比較して,関節軟骨表層における扁平化した細胞の出現,軟骨・骨移行部における境界線の複雑化,核の濃縮像,軟骨下骨層からの血管様構造の進入などの組織変化が観察された.また,I群,PS群には関節軟骨層の厚さや軟骨細胞密度が減少傾向にあった.以上のことから,これらの組織変化は関節軟骨の廃用性萎縮の初期段階であると考えられ,同時にCPMが関節軟骨の廃用性変化の予防に効果がある可能性が示唆された.