抄録
地域で実施されている乳幼児発達相談などの母子保健事業において、子どもの発達上の問題だけでなく、母親の育児ストレスにも十分注意を払う必要がある。本研究では、ストレッサーとしての育児状況を具体的にすることと母親の育児負担につながる要因についての検討を目的とする。育児ストレスに関する体験談等を公開しているホームページを参考に24の質問項目を設定し育児負担尺度とした。主観的に育児ストレスをどの程度感じているかの項目を加えた質問紙法による調査を行った。対象は、乳幼児健康診査等に訪れた0から3歳までの子どもを持つ母親573人(有効回答185人)である。分析には、SPSSを使用した。今回の調査によって、母親が負担と感じる育児状況は、「子どもの反抗」と「子どもの気質」からくる2つの要因が関連していること、また、乳幼児初期の子どもを持ち、出産前は就労して、現在は専業主婦をしている母親ほど育児を負担と感じ、ストレスが高いことが示唆された。相談などの臨床では、子どもの発達支援だけでなく母親の精神的サポートを考慮した上で慎重に介入していく必要があると思われる。